その他

□冒険の裏側*
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6月1日の朝、考古学教授のタリコ氏がファームを訪れた。
カウレア火山に探検に行くのだが、一緒に来てはくれないかと要望だった。何かと危険なところにいくので、護衛としてついてきてほしいそうだ。
特に予定のなかったテニアスはこれもいい経験だろうとコルトとモンスター(ヨロイモッチー)のスカイガルを同行させることにした。
「テニアスさん、急いで戻ってくるのでそれまで冷蔵庫の中に入っている青いふたのタッパーを電子レンジで温めて食べてくださいね。外に食べに行ってもいいですからね。くれぐれも温めるだけですよ。温めるだけ!余計な真似はしないでくださいね」
モンスターの育成から牧場経営までらくらくとこなすブリーダーになるために生まれてきたようなこの男、実は掃除させれば余計に汚す。料理作らせれば小火を起こす。お使いさせれば道に迷い、人との会話の間が持たぬ、見事なまでの社会不適応人間だったのだ。
本部がテニアスに助手をつける際の条件に「家事手伝い」を追加したのも仕方がないことだろう。
そして一番親身になって面倒をみてくれそうなコルトが採用されたのだった。
「郵便は止めてありますから。あと困ったときには道具屋のおばちゃんのところに行ってくださいね。お風呂(温泉)には3日に1回は入ってくださいね。歯は毎日磨くように・・・」
コルトは子供にするようにいろいろと注意を言った。それだけ不安なのだ。確かに帰ってきたらファームが全焼しているのはもう見たくないだろう。
テニアスはいつものように聞いているのかいないのかわからない様子でそれを黙って聞いていた。
「わかりましたか?」
コルトの言葉にテニアスがこくんとうなずくのを確認すると、コルトはようやくファームを去っていった。
テニアスは2人と1匹が去っていくのを見送った後、家へと入っていった。

まずはコーヒーでも飲もうかとテニアスは自動飲料給仕機にMYコップをセットした。
機械の上に大きく紙に書いてあるとおりに、コーヒー豆をザラザラと赤いラインまでいれ、ふたを閉めるとスイッチを入れた。
とたんにゴゴギギゴと機械がうなりをあげた。
ボン!
爆発音とともに黒煙があがる。一瞬の間をおき、火が姿を現した。
テニアスは火を消そうと椅子の座布団を手に取り、それで給仕機を叩く。
大してあわててない様子で火を消そうとしていると、家の戸がノックもなしに開いた。
「香ばしいにおいが外まで香ってるぞ。昼に焼肉か?豪勢だな――っておい!火事か!?」
戸を開けたのはトレジャーハンターのカヴァロだった。
テニアスは手を止めてカヴァロの方を見た後、椅子に座布団を戻しカヴァロに椅子を勧めた。
「おもてなしするのも正しいがな、まずは火を消せ!」
カヴァロは座布団を手に取ると、手早く火を叩き消した。
額を手でぬぐいながらテニアスの姿をなんとはなく探すと、ちょうど彼は隣の部屋からバケツを持ってきているところだった。
「おいおい、火はもう消えてるぜ」
テニアスはカヴァロの言葉を聴いても止まることなく、まっすぐに給仕機に近づくと給水口のフタに手をかけた。
しかし熱かったのかすぐに手を離した。
いつもつけている腰のポシェットから皮の手袋を出し、手につけるとフタを開けた。
そして一気にバケツの中の水を注いだ。水はタンクの中に入ったのと外にこぼれたのが半々位だった。
「おい、お前一体何をしようとしてんだ?」
テニアスはスタートボタンを押そうと・・・・したがカヴァロがその手をつかんで止めた。
「わかった。お前はコーヒーを煎れたいんだな。わかったからお前はおとなしくそこに座ってな。コーヒーなら俺が煎れてやる」
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