その他

□時とともに熟す思い
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「おいA、この時計お前のか?」
遅刻した罰で廊下掃除をさせられていたAが声に振り返ると、そこにはBがいた。

Bはやや大振りの見覚えのある懐中時計をこちらに見せる。
「食堂の前に落ちていたぞ」
「ありがと」
それは確かに自分の時計だった。

「お前いい加減に落し物は止めろよ。今月になってから何か落としたのこれで3回目だろ」
「しかも失くした物もすごくてさ、時計はこれで4つ目なんだ
すごいだろ」
Aは受け取った時計を内ポケットに入れると、もう落とさないように鎖を襟元でとめる。

「何がすごいのか俺にはわからん。それより、落し物の件でセバスチャンが呼んでいたぞ」
「え?セバスチャンが」
Aは満面の笑みを見せる。

「ああ、休憩室で待っているって」
「セバスチャンが俺のことを待ってるv」
Aはハートを飛ばながら喜ぶ。
Bはそんな姿をあきれながら見ていたが、ふととあることを思い出した。
「そうだ――」
「ありがとなB、じゃあオレさっそく行ってくるわ」
AはBの話を最後まで聞かずに手を振りながら、走り去っていった。
BはAの背に向けて叫ぶ。
「南館2階廊下中央と1階北に罠が見つかったら、気をつけろよ!!」
Bはそれだけいうと、自分の役目は終わりとばかりにAに背を向け、次の仕事へと向かう。
Bの後方でAが声もなく落とし穴に落ちた。
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