FF7

□聖なる日の小さな奇跡
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それは聖なる日の小さな奇跡。



郊外の岩砂漠を一台の大型バイクが砂煙を上げながら走る。
運転者の金髪が風になびきながら太陽の光を反射する。サンバイザーの奥に隠れた鋭い瞳はただ前を見つめていた。
ふと目線が横にそれた。
あたりを見回すが岩と僅かな植物の他には何も無い。
「気のせいか・・・」
クラウドはそう呟くと再び前を向き、走り去っていった。

その走り去る後姿を3つの人影が見つめていた。



低速に落しながらも上手くバランスを取りながら、クラウドはセブンズヘブンの脇にある車庫へと近付く。フェンリルを自動感知したセンサーがシャッターを自動で開ける。ちなみにこのセンサーは22時以降になると開かないようにティファに設定されていた。
中ほどにバイクを止めると、クラウドはフェンリルから降りた。油の匂いが鼻をくすぐる。
サンバイザーをハンドルに引っ掛けると彼は家へと繋がる扉へと向かった。
途中スイッチを押すとシャッターがゆっくりと擦るような金属音を立てながら降りはじめた。
扉を閉めると自動で明かりが消え、車庫には元の静寂が戻った。


普段は子供達のにぎやかな騒ぎ声や酒場独特のにぎやかさに満ちていたが、不思議と今は静かだった。
昼を少し回った時間のせいかもしれない。強すぎる太陽のせいで影が濃くなり、建物の中は静かな暗闇に満ちていた。
「出かけているのか?」
そっと呟くと住居部である二階へと向かった。
階段の軋みが大きく聞える。
二階にも誰もいなかった。クラウドはマントをベッドの上に放るとその上に寝転がる。
目を閉じると闇と共に心地よい倦怠感が忍び寄る。

そのままどのくらいそうしていたのだろう。
ふと、人の気配を感じて意識が浮かび上がった。
いる。
それも部屋の中にだ。
クラウドは目を瞑ったまま、辺りの意識を探る。どうやら部屋の入り口付近に一人、そこから少し離れた窓際にもう一人がいるようだ。
どちらもなかなかの使い手のようだ。しかし特に殺気は感じない。ただ何か違和感が、そうそれはまったく違う生き物、まるで違う時限から来た人間によく似た生き物と対峙しているかのような違和感を感じた。
武器は小型の刀がベッドの下に、大型の物が2丁クローゼットの中にある。そこまで1・2秒といったところだろうか。
クラウドはあくまで相手に害意が無いことを確かめると、ゆっくりと目を開けた。
上半身だけ起き上げ、ベッドに腰掛けながら入り口付近の人物に視線をやる。
壁にもたれかかるように佇むその人物は上から下まで黒尽くめだった。体のラインにぴったりとしたラバースーツのようなものを着て、ぼさぼさな黒髪を無造作にそのままに後ろに流したその男はクラウドが起き上がったのを見ても特に反応がなかった。
ただ静かにもう一人のほうへと視線を送った。つられてクラウドも視線をそちらへとやる。そこにいたのは色々な意味で黒い男とは対照的な人物だった。
彼とは違いゆったりとした白を基調とした服をきて光を放つかのような鮮やかな白髪は強く存在を示していた。先ほどの男はまさしく陰でありこの男は陽であった。決して似ていると言う訳ではなかったが、なぜか2人は同じように見えた。
腕を組み窓の外を見ていた白い男がゆっくりとこちらを振り返った。その顔には何故か笑みが浮んでいた。


「会いたかった・・・・・・兄さん」


脳内が一瞬真っ白になった。窓の外の喧騒が虚しく耳に届く。
「い、今何って言った?」
声を必死に絞り出してクラウドは問いかける。少し震えていた。
「会いたかった」
「いや、その後」
「兄さん」
「2×3=6?」
「違う。兄さんだ」
「誰のだ?」
そこで白い男はクラウドのほうを指差した。
「俺が、君の兄さん?」
白い男と黒い男が同時にうなずいた。

クラウドは再び意識が遠くなった。
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