FF7

□愛ゆえの殺意
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昔から死にゆくものの体温が好きだった。
少しずつさめていくその体や、死後硬直が始まりつつある筋肉。そして弱まる鼓動。
それらはとても甘美な匂いで私を誘惑する。
だから、研究者になった。
実験に失敗はつきものだから・・・

だからあのタークスの男を撃つときも躊躇せずに引き金を引いた。
乾いた音と硝煙の香り、紅い・・・花。
思わず笑い声がこみ上げる。
なんて甘美な光景だろうか。黒いスーツに血がよく映える。
だが嬉しいはずなのになぜ我が頬は濡れるのだろうか?

宝条は倒れたヴィンセントのわきの下に手を入れ、引きずりながら研究室へ連れて行く。
彼の体は想いの分だけ重い。
そんな考えを頭から追い出す。くだらない。
苦労しながら、ヴィンセントを手術台の上に乗せる。
そして血に染まるスーツを手早く取り去る。
そのときヴィンセントの喉がヒューと笛のようになった。
「なんだ、まだ生きておるのか」
面白くもなさげにはき捨てると、脱がし終えた服を片付ける。
一糸まとわぬヴィンセントの体に宝条はそっと触れる。まだ温かい。
胸から染み出す血を掬い取ると口に含む。
鉄くさいが、でもどこか求めていた味がする。
宝条はとてもいとおしそうにヴィンセントの頬を血のついた手でなでた。血の気がうせた肌に赤い死に化粧が塗られる。
黒い髪、白い肌に赤はよく似合う。
「そういえば、お前の目も赤かったな」
瞳を抉り出そうかと少しの間考えたがやめた。

もてあましたメスを無意味にヴィンセントの手につきたててみた。
また喉がなった。
なんて面白い私の人形。
メスを引き抜くと今度は胸の中心に押し当てる。そして少し力を入れた。
鋭く研ぎ澄まされた刃が白い皮膚を切り裂く。
長年の経験があるから血管を傷つけることなく、宝条は腹部を切り開いた。
もう喉はならない。
内蔵は思ったとおりきれいな色をしており、まだ生き生きとしていた。
心臓も弱弱しいが脈打っている。
そして心臓の鼓動にあわせ血が体内から排出される。
外に出た血は体のラインに沿い、切り開かれた腹部へと流れ込む。
きれいだった内臓に血が満ちる。

心臓をさらけ出そうと胸部を開いていると、心臓の上に異物を見つけた。
どうやら自分の打った弾のようだ。
コレを取り除き傷口を閉めてしまえば、この男は・・・・・そこまで考えて首を振る。
「私はなにを考えとるんだ。この男を助けたって何もありゃせん」
それでも血に濡れた手で弾をそっと取り出した。
そのまま放ると床の上で二三度跳ねてから部屋の隅に転がっていった。
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