FF7

□闇を望むもの
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「・・・・兄さん」

ふいに呼ばれた気がしてヴァイスは後ろを振り返る。その幼い声にひとつの姿を思い浮べながら。
しかし、振り返ってもその姿は無く、腹心のロッソのみが目に映る。
「どうしたの?ヴァイス」
ヴァイスは黙って己の手を見つめる。
昔、この手の先にいた誰かの笑顔が目に映る。

「なあに?兄さん」

「本当にどうしたのよ」
「いや、ふと昔のことをな・・・思い出していたんだ」
「昔のこと?私だったらあんな嫌なこと思い出したくもないわ」
感情が激したのかロッソは刀を掲げると辺りの岩に切りかかる。
「・・・・ネロ・・・・」
思い出の中にある名を呼ぶ。それは最後のパズルのピースのようにぴったりと当てはまった。
「そうだ、ネロだ。どうして今まで忘れていたんだ!?」
暴れ飽きたロッソが不審そうにヴァイスの方を向く。
「ヴァイス、本当に今日はどうしたの?様子が変よ」
「本当にオレはどうしていたんだろう。はやく迎えにいかなければ」
あっけにとられたロッソを置き去りに、ヴァイスは歩き去っていった。



住処にしている元研究所に入ると、まっすぐにコンピュータールームに入る。
入ってすぐに専用のSNDのヘッドギアを手にいすに座り、ネットの奥に潜る。
膨大な情報の中から必要なものだけを選び取ると、さらに奥へと向かう。
研究所という狭い空間の中から必要な情報を得るのは簡単だった。
記録によると、西の研究所の地下でネロは封印されているようだ。生かしておくには力が強すぎて暴走してしまうが、殺すのにはもったいなかったようだ。
しかしそんな情報はどうでもよかった。ただ生きている、それだけで十分だった。
ヴァイスは歓声をあげると、部屋を飛び出した。
そしてワープを多用しながら急いで西の研究所へ向かう。

「ネロ・・・ネロ・・・・・ネロ!」
研究所に着くと名前を呼びながら地下へと進む。ここには人の気配がない。
たとえいたとしてもうれしさのあまり殺してしまいそうだ。

「ネロ!」
データにあった部屋の扉をこじ開ける。
しかしそこには誰もいない。
荒らされた形跡のない部屋には青い明かりが点いている。
ヴァイスは青く照らされながら中に入る。
部屋の中心に配された魔晄カプセルが空いている。おそらく中にネロがいたのだろう。
辺りを見回すと机上にパソコンがあった。
起動させると、中にあるファイルを次々に開け、プロテクトを外し必要な情報を集める。
やはりここではネロの闇に関する実験が行われていたようだ。
制御装置が完成したとある。
振り返るとカプセルの横にそれらしき拘束具が転がっていた。
必要そうな情報だけ頭に入れると、パソコンの電源を落とす。
そしてもう一度部屋を見回した。
カプセルがあるということはおそらくネロは近くにいるのだろう。DGのほとんどのものはカプセルなしでは生きて生けないからだ。

「ネロ・・・ようやく迎えにきたよ」

それは遥か彼方の小さな記憶。温かな唯一の記憶。
純白の帝王は少し泣きそうに顔をしかめると、記憶の中にある弟を探しにいく。

それは恋焦がれるほどの狂おしい闇への道。
たとえどこにいても探し出してみせる。
そして捕まえたら決して離さない。

なぜなら光は闇を飲み込める唯一のものであり、闇を望む唯一の者なのだから。


 

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