FF7

□林檎
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ある日、ヴァイスが見慣れないものを片手に現れた。
「兄さん、それなんですか?」
「林檎だ」
ヴァイスが差し出したその紅くて丸いものを、ネロは興味津々といった様子で受け取った。

「食べてみるか?」
「これ、食べれるんですか?」
食べ物と聞いて興味が増したのか、林檎を顔の前に持ってゆき真剣ににおいをかぎ始めた。
「ほら、貸してみな。皮むいてやるから」
少し惜しそうに手渡された林檎を、ヴァイスは小ぶりなナイフで上手に皮をむく。
さすがに見事なまでのナイフ捌きで均等に皮をむく。一本の紅い帯が少しずつその手から作り出されるのを、ネロは足元に座りじっと見る。

ふと、顔の前にぷらぷらとしている皮の端っこを手にとって見た。
においをかぐと、とても甘いにおいがした。
ネロは口の拘束具をとると、おそるおそるそれを口に含んだ。
口に含むとかすかに甘く、そして爽やかな匂いが口いっぱいに広がった。なんだかうれしくなって、そのまま皮を食べ続ける。
「ネロ、行儀が悪いぞ」
笑いながらヴァイスは皮をむき終えた。
そしてまだ一心不乱に皮を食べ続けるネロに林檎を手渡した。
ネロは皮を食べ終えると、赤から白に変わった林檎を見つめる。
「もう、食べてもいいのですか?」
「ああ、中に芯があるからそこは食べるなよ。すっぱいぞ」
「兄さんは何でも知ってますね」

ネロは林檎を食べようとしたが、ふと動きを止めると口をあけたままヴァイスを見上げた。
「兄さんも食べますか?」
「いや、オレはいいよ」
ネロは林檎とヴァイスの顔を見比べると、背中の翼を一羽ばたきさせる。
すると手の中の林檎はいつの間にか半分になっていた。
半分に切った林檎の大きいほうをヴァイスに手渡す。
「兄さんと半分こvv」
「オレはいいのに・・・まったく、お前は優しいな」
そして兄弟は仲良く林檎にかじりついた。


残った芯は日当たりのいいところに埋めましたとさ。
「ねえ、いつ芽が出ますか?」
「それはオレにもわからんな」
「早く大きくなるといいですね。そしたらまた林檎食べましょう」
「ああ、そうだな」
その後、ジョウロ片手にうろつくネロの姿があったとさ。

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