京極

□押入れタイムトラベル2
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結局関口が家に帰ってきたのは2日後のことだった。
いつもと変わらない様子で押入れから出てきた関口を迎えたのは、やはり死神の異名を持つ男だった。
おそらく押入れの前で張っていたのだろう。数多くの本が和室に積み重ねられていた。
「ようやく帰ってくるつもりになったようだね。まったく君という人はどれだけ心配を人にかければ気が済むのだね?待つ人の気も知らないで、自分はあの山岡君とか言う人の家でのんびりして。本当に失礼な男だな」
京極堂はさっそく関口に愚痴った。

関口が再び押入れに戻ろうとすると、京極堂が襟首をつかんで止めた。
「逃げることは許さないよ」
関口は抵抗を少しばかりしたが、やがて抵抗をやめると座りこんだ。
黙り込んだ関口に京極堂はつらつらと文句を連ねて言った。
関口はひざ小僧を抱え、床をじっと見ながらおとなしく聞いていた。

「話をちゃんと聞いているのかね?」
関口は聞いているのかいないのか、なんの反応も返さなかった。
京極堂は首を横に振り、ため息をついた。
「まったくあきれたねぇ。とりあえず君には榎木津に会って貰うことにしたよ」
反応がなかった関口が急におびえたように体をびくつかせた。
あわてて押入れに逃げ込もうとするのを、京極堂は押さえつける。
今度はなかなか頑張る。

「抵抗しても無駄だよ。なぜなら・・・」
京極堂の言葉は、ふすまが勢いよく開けられた音で消された。
「わはは、神のご光臨だ!!あがめるがいい」
「というわけだ」
どうやら榎木津も関口宅に泊り込んでいたらしい。
関口は一層わたわたと逃げようと慌てる。
榎木津は笑いながら近づいてくる。
「ふむ。それがタイムトラベルか」
何か物知り顔で榎木津は言った。

「何かわかったのかね?」
「全然だ!!サルがどこかへ行くのはわかったが、どうやってかはわからん!!」
榎木津は不思議そうな顔をして押入れの中に入り込む。
「うん。サルがここに入って次に開けると、もう違うところだ。サルは特になにもしてはいないように見えるぞ」
京極堂も関口の手をつかんだまま、榎木津の後について押入れの中に入り込んだ。男が3人も入ると手狭な押し入れだ。2人はくっつきあいながら検分をしている。
その隙をつき、関口は押入れの戸を閉めた。
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