三国・戦国

□失言
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失言


鍛錬所で張遼と徐晃が激しく打ち合っている。
お互いに激しく打ち込むたびに辺りに激しい金属音が響きわたる。
激しい呼吸が遠く離れたところまで聞こえる気がする。
やがて鍛錬が終わったのかお互いに礼をすると、思い思いに身体をほぐし始めた。
そんな2人に拍手が送られる。
振り返ると、そこには曹操が鍛錬所の中に入ってきているところだった。
慌てて立礼をとる2人の動きを手で止めると、曹操は辺りを見回しながら声をかける。
「なかなかいい試合だったぞ」
「いえ、まだまだです。やはり実戦の緊張感があるか否かで動きが違います」
張遼が首を振り謙遜をする。
その様子に曹操が満足げに笑う。
「あの動きでまだまだか・・・次の戦が楽しみだ」
曹操の言葉に張遼と徐晃は同時に頭を下げる。
曹操は更に2人のもとに近づくと、その手に持つ武器を眼を細めて見る。
「それにして大きな槍と斧じゃのう、よくまあ軽々と扱えるものだ」
「まあ、なれてますからな」
「ははっ、確かに殿(の武器)からすれば大きいですなぁ」
徐晃の何気ない一言に鍛錬所が凍りつく。
「徐晃よ・・・今、なんと言った?」
「はい、殿の(武器の)小ささからみれば拙者たちの(武器の)方がはるかに大きいといったでござる」
空気の読めない徐晃はただ笑顔でそういう。
曹操は額に青筋を浮かべながら、腰の剣に手をかける。
氷河期突入まじかの冷気が身と心を凍りつかせていく。
「柄の長さだけでもう殿(の武器)を越していますかなら」
張遼は黙って徐晃から離れると、静かに命運を祈った。



その後、彼の行方は誰もしらない・・・

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