三国・戦国

□雪降る日に夢見るは
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注意:呂布が小さいです。
ギャグは含まれていません。多少暗い話です。


雪の降る日に夢見るは



下邳城はすっかり敵軍に囲まれ、まもなく落ちるのは誰の眼にも明らかであった。
張遼は眠っている呂布を抱えながら、外を見ていた。
「将軍、準備できました」
そんな彼に声がかけられた。
振り返るとそこには身の丈2m.もある大男が派手な鎧を着込んで立っていた。
赤と金の煌びやかな装飾のその鎧はとても金額をかけていることが一目でわかる。
男自身も戦化粧をしており、全体的にとても目立つ格好をしていた。
「李将軍、すまない」
その男に張遼は本当にすまなさそうな声でわびる。
李将軍と呼ばれた男は恥ずかしそうに指で鼻頭をこすった。
「いいんですよ。オレ、殿のこと好きだし、殿が助かるのなら、オレなんかの命の一つや二つ、いくらだって使ってください」
「あらあら、だったらそんな話し方では駄目ですわ」
男の後ろに現れたのは戦場に似合わぬたおやかな女性だった。
「ちゃんと練習したとおりにお願いします」
「おう、承知した!」
李将軍はとたんに荒々しい口調で喋りだした。
喋るというよりも怒鳴るに近いような喋り方は今の格好にとてもよく似合っている。
「ふむ、まさに呂布奉先そのものだな」
「ふふふ、私の眼に狂いはございませんわ」
貂蝉は李将軍の解けかけていた肩紐を優しい手で結びなおす。
「それでは頼みましたよ」
「ふん、オレにとっては簡単なことだ」
鼻息も荒く、呂布に扮した李将軍は部屋から出て行った。
「貂蝉、張遼、殿は頼んだぞ!」
「承知いたした」
去りゆく将軍の後姿を悲しそうな眼で見送った。

「貂蝉殿、最後の頼みだ呂布殿を頼みます」
張遼は腕の中で眠っている呂布を貂蝉に渡した。
呂布はわずかに身じろぎをしたが、ぐっすりと眠ったままだ。
「はい、任せておいてください」
腕の中の呂布の頭をそっとなでながら貂蝉はやわらかく微笑んだ。
張遼も呂布の頭を撫ぜ、彼にしては珍しく微笑んだ。
「それでは行ってくる。達者でな」
「お気をつけて、というのも変な話ですね」
おもわず2人の間に押さえた笑い声が漏れる。
「お主のこと、嫌いではなかったぞ」
「私たち、いい共犯者でしたわね。今までとても楽しかったですわ」
「つらいことを任させてすまんな」
「それはお互い様ですわ。せいぜい頑張ってくださいね」
笑みをお互いに見せたまま話を続ける。
「私が失敗するとおもうか?」
「思いません」
「では、いってくる」
「いってらっしゃい」
最後に呂布の頭をなでると、張遼は武器を手に部屋を出て行った。
「どうぞ、御武運を・・・・」
貂蝉はそう呟くと、呂布を手に窓辺から外を見つめた。
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