その他

□冒険の裏側*
5ページ/5ページ

その夜、2人はコルトの用意した料理とカヴァロの簡単なスープで夕食を取った。
その間もカヴァロは甲斐甲斐しくテニアスの世話をするのだった。
そしてこの状態のテニアスを放置するのはあまりにもコルトがかわいそうだったので、カヴァロもこの家に泊まることにした。
客間のベッドに寝転んでいると不意にドアが開いた。
「ん?何だ・・・」
上半身を起こし扉の方を向くと、そこには枕を抱えたテニアスの姿があった。
「テニアスか・・・どうした?」
優しく問いかけると、テニアスはとことことカヴァロのベッドのすぐ脇にまで来た。
そして、布団の端をめくりあげると中に入った。
カヴァロがあっけに取られているうちにテニアスは布団の中にもぐりこんだ。
カヴァロは10秒ほど考えた後、布団を一気にめくった。布団の中で丸まっているテニアスが少し驚いたようにこちらを見上げる。
その姿にカヴァロは毒気を抜かれて、布団をゆっくりとおろした。
「一緒に寝たいってんなら、枕こっちに出しな。足元に丸まられたら邪魔で仕方ない」
頭をかきながらそれだけ言うとテニアスはもぞもぞと布団から這い出てきてカヴァロの枕の横に自分の枕を置いた。
「それじゃあ、電気消すぞ」
枕元にある電源スイッチに手を伸ばしながら一応確認を取ってから、電源を消した。部屋に穏やかな闇が満ちる。
まったく変なものに懐かれてしまった。そう思いながらカヴァロは布団に横たわる。その服の端をそっとテニアスが握った。
「おやすみ」
そんなテニアスの頭をやや乱暴になでると、カヴァロは眼を閉じた。

朝太陽と共に目覚めたカヴァロは横のぬくもりに手を伸ばす。そしていつもの様に胸に抱き寄せ、半ば無意識に唇にキスをした。
ふと、いつもと違う感触に気付き、意識が徐々にはっきりしてくる。
目の前にはこちらを瞬きせずじっと見つめてくる瞳があった。その様子はまるで小動物か子供のようでやはりこいつは子供っぽいななどと頭の隅で思った。
「い・・・今、オレ、なんかしたか?」
何の表情も表さない彼はその問いに答えることになく、瞳を閉じゆっくりと布団に沈み込んだ。
やがて寝息が彼の口から漏れ聞こえてくる。
「お前は、こんなときも呑気なんだな・・・」
再び寝入ってしまったテニアスを見下ろしながらしみじみとカヴァロは呟く。その呟きを聞いているのかいないのか、テニアスはただただ惰眠をむさぼっている。
カヴァロは唇に指を沿わす。
温かな感触が先ほどの記憶を呼び覚ました。
(あいつの・・・結構やわらかかったな)
後ろ向きに布団に倒れこむと柔らかな感触がその体を受け止める。
その衝撃に起きたのか、テニアスが小さくうなり声を上げる。
「お、ごめんごめん」
そう言いながら頭をなでると、また彼は寝入った。カヴァロはなでているその手とテニアスの顔を、唇をじっと見つめる。
開いている片手で眼を覆うと、カヴァロはもう一度寝るのであった。
結局その日は昼近くまで2人で寝てしまった。

そんな穏やかな生活はその後も続いた。
一緒にごろごろしたり、一緒に買い物にいったり、時々追いかけっこをしたり、そんな日々がただ静かに過ぎてゆく。
テニアスは確実にカヴァロに懐いていた。
相変わらず風呂には入ろうとしないが、それでもカヴァロと一緒ならどうにか大人しく入ってくれるようになってくれた。
懐かれるのは悪い気はしないが、ただ外観が問題だった。中身はすっかり子供なのに見た目が20代半ばの男性なのだ。これで懐かれるのは少しというよりもかなり微妙なところだった。
そしてさらなる問題は彼がいっさい喋らないということだった。基本彼が自分から望んでくることは無く、ただ此方からの要求の是非を問うだけであった。
これにはカヴァロも多少思うところがあった。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ