その他

□冒険の裏側*
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「ほい、そこまでな」
カヴァロはテニアスを後ろから捕まえて机から引っぺがすと、キッチンから持ってきた布巾で机のうえをきれいに拭いた。
その後布巾と使ったコーヒーカップを洗い、プラスチックでできていたためあれだけの騒ぎでも無事だったテニアスのカップもついでに洗った。
牛乳缶はどこへいったのか見当もつかない。
ふと視線を感じて振り向くと牛乳まみれのテニアスがじっとこちらを見ていた。白濁色の液体を口の周りにつけた見目だけはいい男がじっとこちらを見ているのは、ちょっとやばい光景だった。しかも先ほどの戦闘のおかげで服はいい感じに乱れていた。
(やべえな・・・別にオレそんな気はないんだけどな。まあ、早いうちに退散するか。そのうちコルトも帰ってくるだろうしな)
頭を掻いて気を紛らわせると、一応テニアスに問うてみた。
「なあ、コルトはいつ帰るかわかるか?」
テニアスは横を向くと壁の方を指差した。
指差された先にはカレンダーがかかっていた。
カレンダーの6月7日に赤で丸があり、その下には「コルト帰宅予定」と書かれていた。
(一週間もこいつを一人で留守番!?正気なのか?)
横目で見るとテニアスは顔についた牛乳を一生懸命指ですくってなめているところだった。
「う・・・・とりあえずお前は風呂に行って来い」
ひとまずテニアスを追い払って、それからゆっくりと考えることにした。
のはずだった・・・

風呂という単語を聞いた瞬間テニアスはまた獣のような動きでキッチンから走り去っていった。
「なんだ?」
キッチンから慌ててテニアスの消えた方向を見てみると外へと続く扉から消えるところだった。
「ま、まさか・・・風呂嫌いなのか?」
もう勘弁してくれとカヴァロはキッチンの床に座り込んだ。

散々追いかけまくった挙句、結局はわなで捕獲した。
言葉の通り首に縄を結って半ば引きずりながら風呂場へ連行していたた。
脱衣所に到着してもあきらめることはなく、逃げようと虎視眈々と隙を狙っていた。
カヴァロは覚悟を決めるとドアに鍵をかけた。
「さて、覚悟しやがれ。ここまでオレをてこずらせたんだからな。おとなしく脱ぐんだな」
カヴァロの異様な雰囲気を感じ取ったのか、必死に逃げようとするがなにせ狭い脱衣所だ。しかも首にはまだ縄がかけられたままだ。
すぐに壁際に追い詰められた。
「まったく、お前がおとなしくしていればこっちも乱暴にしないだけどな」
なおも嫌がるテニアスを力ずくで押さえ込むと、カヴァロは服を剥ぎ取ってゆく。
かなりシンプルな服を着ていたおかげでいともたやすく脱がせられた。ただ靴とズボンを脱がすのにまた一苦労だった。
なにしろ靴を脱がせようとかがむと、手を使って逃げようとするのだ。
カヴァロは今度はテニアスを後ろ手にロープで縛りつけて、床に転がした。
「これでおとなしく脱がさせてくれるな」
皮で出来たロングブーツを苦労して脱がしてから、次はズボンを脱がそうと手を伸ばすとその手をかまれた。
予想外の行動に驚いてテニアスの顔を見た。
なかなか表情を示さないテニアスだったが、その眼には恐怖と混乱が現れていた。
(そうか、いきなりあまり知らない人間が来て捕まえたかと思うと、無理やり服を脱がそうとすればパニックになるのも・・・あたりまえだな)
カヴァロは表情をやわらかくすると、刺激しないようにそっとテニアスの頭に手を置いた。
テニアスは怯え、次は何をされるのだろうと身をすくめた。
「大丈夫だ。怯えさせてすまなかったな」
カヴァロはゆっくりと優しく頭をなでた。
テニアスは恐る恐るカヴァロを見上げ、そしてゆっくりと噛み付いたままだった口を離した。
テニアスが落ち着くのを待ってから、カヴァロは縄を解いてやった。
テニアスは起き上がると、自分が噛み付いた所為で傷ついた手の甲をそっとなめた。
「無理強いさせてわるかったな・・・でも、風呂ははいってもらうぜ」
テニアスはカヴァロの手をなめながら小さく頷いた。
「そういえばお前のところの風呂ってどうなってるんだ?」
ふと興味がわいて、カヴァロは脱衣所から続く扉を開けて浴室の方を覗き見た。
するとそこには泳ぐことができそうな広い浴室があった。
「めっちゃ広いな〜今日は汗かいたしオレも入ってこうかな・・・そういえばお前んとこって確か温泉が湧き出て・・・・」
振り向くと半裸状態のまま鍵を開けて逃げようとしているテニアスの姿があった。
「お前な〜(怒)」
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