リクエスト
□続・小さな恋人
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夕食も終わって先に食事を済ませた角都の部屋に行く途中、廊下でサソリと出くわした。
デイダラと違って生身の身体じゃないのか、げっそりしていない、というより、できないのか。
見た目では酷い目にあったかどうかなんてわかり辛い。
オレは小さく手を上げ、「よう」と声をかける。
「サソリ、もういいのか?」
変わりないな、と思っていたが、あっという間にチャクラ糸で逆さまに吊るされてしまう。
「口に…するんじゃないわよ…!」
「ご…、ごめんなさい…(汗)」
デイダラより重傷だ。
オレが謝ると、サソリは放置せずにちゃんと下ろしてくれた。
それから懐からファンシーな絵柄の紙袋を取り出し、立ち上がろうと肩膝をついたオレの目の前につきつける。
「?」
「やるよ。詫びだ」
匂いを嗅ぐと、揚げたてなうえに甘い匂いがする。
中はドーナツか。
だが、オレは受け取るのを我慢する。
いつまでも受け取ろうとしないオレにサソリは首を傾げた。
「どうした? いらねーのか?」
「わ…、悪いけど、角都に…「サソリから詫びという名の贈り物は絶対に受け取るなよ?」って言われてる(汗)」
オレは声マネし、両腕を交差させて「×」を作る。
一瞬、サソリが「チッ、用心深そうだ」と言いたげに舌を打った気がしたが、次の瞬間にはしゅんと落ち込んだ顔をして肩を落としていた。
「あれ? さっきのは幻?」と首を傾げていると、サソリは顔をうつかせたまま、紙袋を開けて中に右手を突っ込んだ。
「…残念だ。…まあ、そりゃそうか。おまえの精子を魔の手にかけちまったんだからな。オレなりの詫びのつもりだったんだけどな…。そう簡単には信用しちゃくれねえか…」
サソリは「はは…」と力なく笑い、ハチミツの匂いがするドーナツを取り出し、もそもそと食べ始めた。
杭が刺さってるわけでもないのに、儀式に匹敵するほどの罪悪感がオレの胸を貫く。
「本当に…残念だ…」
背を向ける際、サソリの目に涙が浮かんでいるのを見てしまった。
そのまま歩きだし、オレは慌てて寂しげなサソリの背中を追いかけ、「ま、待てよ!」と右肩をつかんだ。
「オレが悪かった! ありがたく受け取っとくぜ!」
ドーナツを食べたサソリにも変化はなさそうだし、オレや角都が食べても大丈夫だろ。
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