リクエスト
□緑と桃色
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ギンジとキョウヤはキョトンとした顔をした。
飛段は照れくさそうに話す。
「ほら…、オレと角都ってコンビ組んで2年になるだろォ?」
「ああ、そういえばもうそんなに経ちましたか」
ギンジはそう言って、当初はコンビを組んでばかりで互いを未だに信用し合っていなかった角都と飛段を思い出した。
ひと月に一度はこのアジトに寄る度、角都と飛段の関係が徐々に変化していることにも気付いていたことも。
「去年は、角都の方から祝ってくれたが、今回はオレからも祝いてェ。これ、高ェんだろ? だったら、角都も喜んでくれると思う。もったいねえけど…」
ギンジとキョウヤはじーんと飛段の健気さに感動してしまった。
先程から黙ったまま質屋の中をウロウロしていたのは、角都に渡すプレゼントを探していたからだと察する。
(いいコだ…!(泣))
(こんな嫁さん欲しい…!(泣))
「お、おい、なんで泣いてんだァ?(汗)」
突然声も立てずに涙を流している2人に焦る飛段。
2人はハンカチで己の涙を拭いてから考える。
(まあ、角都さんが受け取って売るならこちらの金になるってことだし…)
(あげても損はないか…)
同じ結果を考えた2人は両手のひらを見せて「どうぞどうぞ、持ってってください」と笑顔で金緑石を譲った。
当然飛段は大いに喜ぶ。
「いいのかァ!?」
「ラッピングしますか?」
キョウヤは包装紙を持ってこようとしたが、飛段は声をかけて止める。
「いいって、このままで。直に渡すし」
「そうですか?」
飛段は金緑石を手のひらにのせ、口元を緩ませる。
「早く角都に渡してーなァ。あ! オレがこの石プレゼントすること、角都には絶対ナイショだかんな!」
角都を驚かせたいため、ギンジとキョウヤに念を押しておく。
キョウヤは「ははは」と笑った。
「バラしませんよ」
「約束だぜ!? ほら、指切りげんまん!」
飛段は左手の小指をギンジの小指に、右手の小指をキョウヤの小指に絡ませ、「ゆーび切ったァ」とムリヤリ約束させる。
2人は微笑ましくなる。
((カワイイことするなァ、この人は(汗)///))
「約束破ったら…、その指もらうからな☆」
飛段は目をギラリと光らせ、大鎌を2人に突き付けた。
鎌の刃先には、飛段が惨殺した者たちの血がこびりついていた。
微笑ましかった2人の表情は真っ青に凍りつく。
((つめられる―――!!?(汗)))
さすが、可愛くても暁のメンバーである。
「ギンジ、飛段はいるか?」
扉越しから角都の声が聞こえ、3人はビクッと大袈裟に肩を震わせ、慌てだす。
「隠さねーと! 石隠さねーとォ!(汗)」
手に持っていてはバレバレだ。
飛段は小声で呟きながら己のどこに隠すか迷い、急いで右袖に入れた。
しかし、すぐに服の下からポロリと床に落ちてしまう。
「飛段さん! 落ちました!(汗)」
キョウヤは急いで拾って飛段の外套の裾をめくり、ズボンのポケットに入れようとしたが、ポケットが見つからない。
「なんでポケットついてないんですか!?(汗)」
「ちょっと待て! 懐にもポケットなかったか!?(汗)」
ギンジは飛段の外套の前を開け、懐のポケットを探しだし、そこに石を入れる。
同時に、角都が扉を開けて部屋に入ってきた。
「ひだ…」
その光景を見た角都は停止した。
ギンジは飛段の外套の前を開けた状態で、キョウヤは飛段の外套の後ろの裾を大きくめくったままの状態で動きを止めている。
飛段はその2人に挟まれていた。
角都から見れば今にも3Pを始めそうな光景だ。
メキャ!!
「「ひィ!?(汗)」」
角都が握っていたままの鉄のドアノブは粉々に砕けた。
ギンジとキョウヤはすぐに飛段から飛び退いて離れる。
「なにをしていた?」
「ま、待った待った角都! 超誤解だってェ!(汗)」
飛段は、今にも2人を殺しに向かおうとせん角都を慌てて止める。
「なにをしていたかと聞いている!」
それでも角都は飛段越しにギンジを問い詰める。
「え…と…(汗)」
目を泳がせたギンジの目は、こちらに振り返った飛段の顔を見てはっとなる。
(しゃべったら、ブッ殺す)
飛段は右手を己の背中に回して角都から見えないようにし、親指を下に向けた。
(マジ目―――!!(汗))
脅しではないことを瞬時に悟ったギンジは声を震わせながら話す。
「ふ、服の中に虫が入り込んでしまって…(汗)」
苦し紛れの嘘に、飛段は激しく縦に頷いた。
「そーそー!(汗)」
角都の目は3人を見据えたままだ。
誤魔化しの笑みを浮かべた3人の額に冷たい汗が流れる。
(疑ってる(汗))
(疑われてる(汗))
(超疑われてる(汗))
角都は前開きになったままの飛段の白い胸板を見つめたあと、「フン」と鼻をならし、背を向けた。
「まあいい。約束通り、これから食事に行くぞ」
「お、おう…」
飛段は小さく返事を返したあと、角都のあとをついていき、角都が部屋を出る前に、飛段は人差し指を口元に当てて「ナイショな」と声に出さずにギンジとキョウヤに伝える。
角都は、質屋の棚に並べられている鏡に映ったそれをチラリと見ていた。
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