リクエスト
□激甘の飴と激痛の鞭
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翌朝、現在は午前8時。
いつも通り、飛段は誰より早く起きることなくベッドで大の字になって眠っていた。
角都は飛段の部屋に入り、気配にまったく気付かない飛段に近づいていく。
敵ならばやられている状況だ。
「飛段」
ベッドの脇に立ってそれを見下ろす角都は名前を呼んだ。
それでも飛段はいびきをかいて眠り続けている。
角都は身を屈ませ、耳元に囁く。
「ひ・だ・ん」
甘い声とともにフッと息を吹きかけた。
「!!?(汗)///」
真っ赤になった飛段は素顔のままの角都のアップを目にした途端、ベッドから転げ落ちた。
「かかか、か、かく、角都?(汗)///」
甘い囁き声は夢の中まで響いていた。
いつもは叩き起こされるのにと飛段は動揺を隠せない。
角都は優しげな笑みを浮かべ、「寝惚けるな」と柔らかく言った。
素顔のまま言われたため、飛段の顔はさらに赤くなった。
夢を見ているのではないかとつねってみるが、痛みが現実を教える。
「おまえ…、今日はどうしたんだァ?(汗)///」
「いつものオレだが?」
「いやいや、全然違うし(汗)///」
眉間の皺がなくなっているのも気になる。
「飛段、今日もカワイイな」
「!!!(汗)///」
頭の中で爆発音が響いた。
「誰だァ!! てめー、角都じゃねえだろォ!!?(汗)///」
思わずベッドの傍の壁に立てかけておいた大鎌を手に取って構えたが、角都は薄笑みを浮かべるだけだった。
幼い子供を優しくたしなめるように「落ち着け」と言って飛段の頭を撫でる。
「朝から元気だな。いいことだ。早く支度してこい。朝食が冷めるぞ」
明らかにキャラが変わっている角都に飛段は困惑した。
完全にペースを乱される。
「え…と…(汗)///」
「手伝ってほしいのか?」
ベッドの上に放られていた暁の外套をつかみ、飛段に着せようとしたが、飛段は首を激しく横に振って断った。
「いい! いいって!(汗)///」
これ以上優しいことをされると気がおかしくなりそうだ、とでも言わんばかりに飛段はいつもより早く支度を済ませ、食堂へと向かった。
その走る背中を見つめている角都の口元が密かに笑う。
*****
朝食でも、やはり角都の様子はおかしかった。
「飛段、口を開けろ」
「な、なんだよ急に…(汗)///」
「食べさせてやる」
「だからいーって!(汗)///」
飛段は周りのメンバーに視線を向けて助けを請うが、メンバーは誰も気にも留めることなく淡々と食事をしていた。
まるで角都が元からそのキャラだと理解しているかのように。
飛段は早食いを済ませ、そのまま角都が逃げるように立ち上がったとき、突然ペインは言った。
「角都、飛段。おまえ達は朝食が済んだらあとで指示する町へ向かえ」
飛段を逃してなるまいかとするタイミングである。
「ええ…(汗)」
飛段は露骨に嫌な顔をした。
また角都のバイトに付き合わされるのだろうと。
なにより困ったのは、現在様子のおかしい角都と2人きりになることだった。
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