リクエスト

□汝の隣人を愛せよ
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その夜、廊下でイタチは飛段がひとりになったことを見計らい、その背中に声をかけた。


「飛段」


名前を呼ばれ、立ち止まった飛段は自然と振り返る。


「よォ。どーしたァ?」

「鬼鮫を見かけなかったか?」


それらしいことを尋ね、飛段は「へ?」と首を傾げた。


「さっきまで一緒に食堂にいただろォ?」


つい先程のことである。

だが、ここで慌てるイタチではない。


「ふと横を見ると、いつの間にかいなくなっていた」

「怖いな(汗)」


サスペンスやホラーものでありそうなパターンだ。


「知らなければいいんだ」

「?」


イタチは踵を返す前に飛段と目を合わせ、幻術をかけた。





*****





飛段は自分の部屋で祈りをしていた。

己の血で描いた陣の真ん中に仰向けになり、胸の中心に杭を刺してジャシンに祈りを捧げる。


(ジャシン様…)


その時、


「飛段」


飛段の目の前に、闇色の煙とともにジャシンが現れた。

飛段の想像通りの姿でだ。


「ジャ、ジャシン様ァ!!?」


目の前に現れるとは思わなかったのか、飛段は驚愕を露わに声を上げる。

上半身を起こそうかと思ったが、ジャシンは手でそれを制し、「そのままで聞け」と命令した。

飛段は「はい」と返事をしてその状態を保つ。


「飛段、日々欠かすことのない貴様の祈りはいつも受け止めているぞ」

「ありがたきお言葉です、ジャシン様!」


感動のあまり涙が出そうである。


「飛段、実は、ワケあってジャシン教の方針を少し変えることにした」

「えェ!?」

「「汝の隣人を殺戮せよ」が私の宗教の教義であったが、「汝の隣人を愛せよ」に変更するんで、そこんとこよろしく」


最後は軽いジャシン様。


「あ…、愛せよ…?(汗)」


突然の教義変更宣言に飛段は戸惑いを隠せなかった。

ジャシンは説明する。


「まあつまり、今までやってきたことと反対のことをしろということだ。儀式はもちろん祈りもダメ。他人には迷惑をかけず愛を注げ。良いことをいっぱいしろ」

「そんな…。オレ…、そんなのやったことねーし…(汗)」


ジャシンは飛段にさらに近寄ってしゃがみ、その頭を優しく撫でる。


「飛段、おまえはやればできるコだ」

「…!!」


飛段の中に衝撃が走った。


「お任せくださいジャシン様ァ!! オレやります!!」


ジャシンはその返事に満足して「うんうん」と頷き、立ち上がった。


「では、今日も私のために全てを捧げるがいい」

「はい!! ジャシン様ァ!!」


飛段はペンダントヘッドを握りしめ、叫ぶように返した。


それを部屋のドアの隙間から窺っていたデイダラとイタチ。

教義変更を承諾した飛段を見て驚いている。

呆れていると言ってもいい。


「本当にかかりやがった。なんて単純な奴なんだ。うん(汗)」

「オレ自身も驚いている。文句くらいは言うかと思ったが…(汗)」

「ちょろすぎだ。あいつも一応S級犯罪者だろが。うん(汗)」





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