リクエスト
□傷痕ごと抱いて
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大雨の中、なんの前触れもなく、暁の首を狙う賞金稼ぎが、山道を歩いていた角都と飛段を襲撃してきた。
しかし、所詮は一人の火遁使い。
不死身の体を持つ飛段と、あらゆる性質変化を持つ角都には勝てない。
結果は返り討ち。
逆に己の首をとられる羽目になった。
ただでやられてなるものかと、角都に首をとられる寸前、己のチャクラを全て使い、雨の水をも蒸発させる大きな炎の波を2人に食らわせた。
だが、途中で敵の術の発動に気付いた角都は、飛段とともに炎の波に飲まれる直前に回避したため、軽い火傷で済んだ。
「あっちィ!」
飛段と角都は引火してしまった外套を脱いだ。
2人が軽傷で済んだのも、これを身に纏っていたおかげでもあるのだ。
「またゼツに注文しなくてはならんな。また金のかかる…」
「出た。ケチ角都。大体、こんな外套なくたって……」
角都に振り返った飛段は言葉を切った。
角都が頭巾を外した姿を見たからだ。
頭巾に隠されていた髪は雨に打たれ、雫を滴らせたり、角都の頬に張り付いたりしている。
その姿はどこか色のあるものが漂っていた。
「頭巾もダメになった」
そんな飛段の視線に気づかず、角都は右半分が黒く焦げた頭巾を放り捨てた。
それから飛段に振り返って目を合わせる。
不意を突かれたように、飛段はビクッと体を震わせたが、角都は気にも留めずに言う。
「雨を凌げる場所を見つけ次第、そこで野宿する。いいな?」
「あ…、ああ」
飛段は3回頷きながら答えた。
*****
飛段は角都の背後を歩いて剥き出しの背中を見つめ、かと思えば、肩を並ばせて角都の横顔を見つめる。
外で角都が素顔を晒しているのは珍しく、新鮮味がある。
それに、妙な気分を覚えていた。
じっと見つめていると、角都は突然こちらに倒れてきた。
「!?」
咄嗟に飛段は抱き止める。
「角都?」
角都は軽く眉を寄せ、その頬は赤く染まり、呼吸は苦しそうに繰り返されていた。
その弱々しい姿を見た飛段は腰に疼きを覚えた。
押し倒したくなる衝動に駆られかける。
「触るな!」
「!」
角都は思わず大声を出し、飛段を突き飛ばす。
「……触るな」
今度は声を落として言った。
理不尽な角都に飛段は苛立ちを覚える。
「な…、なんだよ。倒れてきたのはそっちだろ」
「うるさい」
「…おまえ、まさか風邪ひいたんじゃ…」
知られたくなかったのか、角都は舌打ちして飛段を睨みつける。
「黙れ」
おぼつかない足どりで再び歩きだし、飛段の先を進む。
「角都…」
飛段が声をかけても無視だ。
(「触るな」…か…)
角都に言われたことを反芻する。
コンビを組んで間もないが、自分から角都に触れた記憶はあまりない。
角都から飛段に触るのは、ほとんど、体を繋げる時か、度を過ぎた飛段を殺す時だけである。
「角都…」
名前を呼んでみるが、やはり角都は無反応だった。
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