リクエスト
□名を呼ぶ光
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「…なんだそれは…」
「小便してくる」と言って山道から外れた飛段を待つこと数分、飛段は黄色いフワフワした毛並の生き物を抱えて戻ってきた。
「……キツネ…」
角都の顔色をうかがいながら、飛段は小さく答えた。
子ぎつねは飛段の腕の中でぐったりとしている。
衰弱しているのか、呼吸も弱い。
「キツネ…」
飛段の言葉を復唱し、角都は眉間に皺を寄せた。
「捨ててしまえ」というのは簡単だが、飛段はそれを許さないだろう。
長年コンビを組んできているため、飛段の行動は大体わかる。
「…見せてみろ」
飛段は抱えた子ぎつねを角都にそっと手渡し、角都を信じてその様子を見守ることにする。
道の端に移動した角都はその場にしゃがみ、子ぎつねの容体を診る。
飛段は角都の後ろで前かがみになってのぞきこむ。
「…怪我をしているな」
子ぎつねは左後ろ脚に傷を負っていた。
罠にハマったのか、猟師にやられたのか。
角都はまず、竹の水筒に入った水で傷を洗い、腕の縫い目から出した地怨虞で傷口を縫っていく。
飛段の場合、これで治療は終わりになるが、今回は自動的に回復しない生き物だ。
「…これを使うのも久しぶりだな」
角都は右手を子ぎつねにかざし、チャクラを送り込んで回復させる。
そして、子ぎつねが目を覚ました。
顔をあげ、角都と飛段を不思議そうに見つめる。
「よかったなァ、おまえ」
飛段は嬉しそうな顔で手を伸ばし、子ぎつねの頭を優しく撫でる。
「角都もありがとなァ」
「造作もないことだ」
慎重な作業だったが、角都は強がる。
「もう少し休んでおけば、じきに動けるはずだ」
飛段は子ぎつねを抱え、まず人に見つかることはないだろう茂みの陰に子ぎつねを下ろした。
「角都に感謝しろよ」
そう言って再び子ぎつねの頭を撫で、飛段は山道で待っているだろう角都のもとへと走った。
子ぎつねは去っていくその背中をじっと見つめていた。
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