リクエスト

□緑と桃色
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ここは角都のアジトである質屋だ。


ギンジとキョウヤが仕事をしているなか、飛段はひとり質屋の中をウロウロとしていた。

角都を待っている時は「暇」だの「なんかやれ」だの「菓子ねーの?」だのうるさいくせに、今日は様子がおかしい。

ギンジとキョウヤはそう思った。


飛段は先程から棚に並べられた商品をじっと見つめたり、手にとって眺めたりしている。


ギンジとキョウヤは気になって資料の整理や帳簿などの仕事がなかなかはかどらない。うるさい飛段の時以上に。


飛段の動きが止まった。

ギンジとキョウヤは我慢できなくて振り返る。

飛段は、部屋の奥の隅の棚に隠れるように置かれている小箱を開けて、その中身をじっと見つめていた。

キョウヤは席を立ち上がり、飛段の背後に近付いて声をかける。


「なに見てるんですか?」


飛段は肩越しにキョウヤに振り返り、小箱の中を指差した。


「な、な、これなんて石だ?」


飛段が小箱の中身には、小さな球体の深緑の宝石が入っていた。


デスクの席に着いたまま、ギンジが飛段の問いに答える。


「それは金緑石といって、今度売りに出す宝石です。とある国にしかない貴重な石で…」

「持ってきた客がそういうこと知らなかったおかげで、騙して安値で買い取りました」


キョウヤは笑みを浮かべ、ギンジの言葉を継いだ。

それを聞いた飛段は「へ、へぇ」と引きつった笑みを浮かべる。


(さすが角都の部下(汗))


悪徳で商売上手である。


キョウヤは飛段に「ちょっと待っててくださいと言ったあと、自分のデスクからスタンドを持ってきて、金緑石の近くに設置した。


「面白い石ですよ。見ててください」


スタンドのスイッチを入れて照明を点けると、石はじんわりと赤色に変色した。


「あ! 赤になった!?」


飛段は理科の実験を目の前にした子供のように驚く。

それを見ていたギンジは「バカッ、キョウヤ(汗)」と小さく舌を打った。


「緑と赤…、角都の目ェみてーだなァ…」


その石と角都の瞳を重ねた飛段は、宝石にも劣らないくらい目を輝かせた。


「ひ、飛段さん…?(汗)」


そこでキョウヤは「ああ、しまった」と内心で後悔した。


(そらみろ、興味持っちまったじゃねーか(汗))


ギンジは飛段の背中を見つめながら内心で呟いた。


飛段はその石を両手で包むように小箱から取り出し、キョウヤの目の前に突き付ける。


「これ欲しい」

「は?(汗)」

「これ欲しい!」

「いや、飛段さん、これは…(汗)」

「これ欲しい!!」

「……………(汗)」


客と交渉し慣れていたギンジとキョウヤは確信する。

この手の客(?)は手強い、と。


「それ、どうする気ですか…?(汗)」


キョウヤはおそるおそる尋ねる。

まさか、売らずにずっと持ち歩いている気なのだろうか。

そうなれば、宝の持ち腐れ、とそのままの意味になってしまう。


飛段は笑みを浮かべて答える。


「角都にあげるに決まってんだろォ」





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