ある日の夜明け色

□ご主人様はオレのもの
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ケージの中から見る世界は同じようでそうじゃない。

違う人間が何人も何十人も何百人も通過するし、天気だって晴れだったり雨だったり曇りだったり色々だ。


でも、見てるだけじゃ、やっぱり退屈。


何度このケージの中に戻ってきたことか。


戻るたびにオレは成長してるから、最初は広かったケージも今は窮屈さを感じる。

せめて、窓側じゃなくて、出入り口付近にある大きなケージの中に入れてくれ。


「わー、カワイイ!」


女の子が目を輝かせながらショーウィンドウに近づき、オレをじっと見つめる。


「ママー、このコ欲しいー」

「ダメよ。うちはペットなんて飼えないんだから」


親と子のお決まりの会話だ。


大体、オレを飼っても、ちゃんと最後まで面倒見る自信があるのかよ。


オレを飼う奴らは、最初は「カワイイ」とか言っておきながら、あとから面倒になって放置した挙句、返却するんだ。


1週間餌も与えられずに放置された時は死ぬかと思った。

心が。


オレは犬か猫かもわからない動物で、車に轢かれても、エサを与えられなくても死なない。


オレが返却されるのは、そういう理由も含まれている。

「カワイイ」が「気味悪い」になってしまう。

ペットショップの店員も、そう思ってるに違いない。

ちゃんと風呂に入れてくれたこともない。


目の前のガラスに映る自分の姿を見た。

銀色の毛並、細長い尻尾、ピコピコ動く耳、ピンクの瞳。


「飼いたい」っていう奴はほとんどコレにつられる。

他のペットにはないものもあるからな。


あとで気味悪がられるなら、もう少しブサイクでもよかった。


「……寝よ…」


気分が沈み、せめて夢では良いもの見ようと丸くなろうとしたとき、ふと、視線を感じ、ガラスの方を見た。


「!!(汗)」





ビクゥッ!!





赤と緑の目の男がこちらをじっと見つめていた。

女子供に見られることはいっぱいあったが、男は初めてだ。

おいおい、しかもガン見だぜ。


「なんだおまえェ!(汗)」


オレの言葉は人間にはわからない。

だから露骨に警戒してやった。


それを見た男は、通り過ぎたかと思いきや、流れるようにペットショップの中へと入ってきた。


窓からレジへと振り返り、男と店員がなにやら話しているのが見えた。


「あいつを飼いたい」


嫌な予感がした。


「オレじゃないオレじゃない(汗)」


店員が近づき、ケージごとオレをレジへと運んだ。


「こちらでございますね?」


オレはフルフルと首を横に振る。


「違う違う、オレじゃない(汗)」

「ああ」

「ゲハ―――!?(汗)」


オレを確認した男は満足げに頷いた。


「ちょっと待て! ペット飼いたいってツラか!?(汗)」


クセになった眉間の皺といい、ペット虐待しますってツラだ。


「カゴに移し替えますね」


店員が犬猫用のケージを持ってこようとしたとき、男はそれを止めた。


「いや、このまま連れて帰る」

「!」


カゴもなしに連れてかれるのも初めてだ。


男の大きな手がオレの体を抱き上げ、料金を払ってそのままペットショップを出る。

背後から「ありがとうございました」と店員の声を聞いた。


「残念だったな、オッサン。オレはこのままトンズラさせてもらうぜェ♪」


どうせこいつも、他の奴らと一緒だ。

適当な育て方してペットショップに返却するに決まってんだ。

それなら、野良として生きる方を選ぶ。


いざ男の腕から飛び降りようとしたとき、寒風が吹き、オレの体を震わせた。


「うわっ、さぶいっ(汗)」


思わず身を縮こませる。

そういや、今はまだ冬だった。


「冷えるな…」


男は自分の首に巻いた黒いマフラーを解き、それをオレに包ませた。

先程まで男が巻いていたから、あったかい。


「温かいか?」


オレを見下ろす男の顔に優しい薄笑みが浮かんだ。


















どっきゅ―――ん!!v

















「!?(汗)///」





な、なんだ、今の音!!?(汗)///





心臓超バクバク。


オレの顔は耳まで真っ赤。




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