+++ story @v +++
□王子様は永眠る。≪前編≫
1ページ/2ページ
「おはよ…」
居ないと分かってて広すぎるベッドの上、ゆーが居た俺の左側に手を伸ばす。
“おはよ”なんて言ったって、今の時間さえ分からない。
ただ眼が覚めたから、無意識のうちにいつもの様にゆーに向かって言っていた。
ゆーがバイクで事故に遭ってからはゆーの御家族とメンバーで忙しく動き回って、悲しむ暇もなかった。
ただ猛スピードで時間が過ぎ、猛スピードで俺の世界が変わっていった。
葬儀が終わり、これからの仕事のことも話し合わなきゃいけないのに、俺は家に引き籠もってる。
大好きなゆーと過ごした家に…
もう二日間、ほとんど何も食ってない。
今朝智が来てくれた時に、買ってきてくれたゼリー飲料を少し飲んだだけ。
俺はただゆーの温もりを探して、何度も愛し合ったベッドに寝転びゆーとの時間を思い出す。
最初はただのメンバーだった。
一緒にライブして、一緒に取材受けて、一緒に飲んで…
でもいつの間にかゆーだけ特別になってた。
…
結成から一年。
俺の中でゆーへの気持ちが変わったように、ゆーの中でも俺への気持ちが変わってた。
そして二人きりで買い物に行ったあの日、ゆーから話を切り出してくれた。
≪俺、海のこと好きなんだよねー。メンバーとしてだけじゃなくて。≫
あれから二年半、出逢った時、気持ちを伝えてくれた時と同じ笑顔で俺の一番近くに居てくれた…
事故だってゆーのせいじゃない…飲酒運転してたあのおっさんのせいじゃねぇか…
ゆーは何も悪いことしてねぇだろ