もし焼き討ち後のカラヤに現れたのがクリス(&ボルス)だったら

□出逢いは焼き討ち場
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しばしの沈黙の後、クリスが言った。

「まるで見てきたようなことを言うんだな」

「まじないを少々たしなむもので。少しだけど、精霊の声が聴こえることもあるんです」

「まじない? カラヤの娘か? いや、それにしては――」

少女は色白で、浅黒い肌のカラヤ民とは明らかに人種が異なる。服装もグラスランド風のものではない。だがだからと言って、ゼクセン寄りとも言い難かった。
少女はクリスの思考を読んだかのように、

「生まれはファレナ女王国。ゆえあって旅暮らしをしている吟遊詩人1年生です。
 ここへは友人を訪ねてきたのです。昔の…古い知り合いに逢いに。でもきっと、この有様では彼女達も……」

「……」

やるせない沈黙がしばし満ちた。
やがて彼女は吹っ切るように微笑んで、

「でも差し当たっては今後のことだわ。何のあてもなくふらっと来たからなぁ…うーんどうしたものかしら」

随分と立ち直りが早いことだ、と、クリスもつられて微笑み、

「だったらビュッデヒュッケ城はどうだ?」

「ヴュッデ…フュッケ…城?」

「ビュッデヒュッケ城、だ」

「ビュッデ・ヒュッケ・城。うん、言えた。ふふっ、何だか早口言葉みたいな名前のお城ね、舌噛みそう。
 場所は? …うーんわかったようなわからんような。
 とりあえず、行き当たりばったりで行ってみます。教えて下さってありがとう」

少女はクリスに異国の礼を取り、去った。



「大丈夫ですかね。彼女、大分顔色が悪かったようですが」

少女が去った後、顎に手、小首傾げの例のポーズでパーシヴァルが言う。

「あぁ、それは私も心配している。
 だが気丈そうな娘だし、あてもなくグラスランドをふらつくよりはいいだろう。あの城はきっと、あの娘の喪失感を埋めてくれる。…我々の言えることではないがな」

言いながらクリスは、ちらり、とボルスを見やる。ボルスは思いつめた風に黙りこくってうつむいたきりだ。





クリスとパーシバヴァルの懸念は的中した。
彼らは、ネジ探索の為アムル平原を徘徊していたところ、行き倒れ寸前だった少女と再び遭遇した。
結局、放っておけずにクリスは少女を保護した。

「すみません……ご迷惑をおかけします……」

クリスの白馬に相乗りした少女は、しゅんとしてうなだれ、しきりに詫びた。

「私、方向音痴スキルSランクの持ち主みたいです……」

「何だそれは」

クリスは思わずツッコんだ。

「まったく、我々が通りかかってよかったですよ」

パーシヴァルは呆れたように言った。


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