拍手用ブック

□can you keep a secret? 〜番外〜
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ツインテールをぴょこぴょこ揺らし、元来た道を戻って行く小さな背中を見送って、
古参ウェイターに少々荷の重い『お使い』を頼んで、レストラン・ファムフラムのオーナーは、奥の控室に向かう。

華やかな店内とは対照的な、簡素な事務机と仮眠用ベッドがあるだけの小部屋に落ち着き、アーダンは大きく息をつく。


「気づいておられたのだな…」


女神とも天使とも慕った、手の届かない女性。店名に冠するまでに想った、初恋の人。



「覚えていて下さったのだな……」



『あの頃』、決して目立った存在ではなかったはずの、補給隊の一兵卒。
今でこそ、辣腕経営者とも億万長者とも呼ばれはするが、
彼女にとってはうだつのあがらない少年でしかなかったであろう、この自分を。



炎の娘は、確かに自分の名前を呼んだ。アーダン、と。あの頃のように。
それがどんなに嬉しく幸福なことか、おそらく誰にもわかるまい。

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