捏造幻想水滸伝X〜初〜

□哀しみの眠る場所・幕間
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セーブルに到着した一行は、旅装もそのままにラウルベル邸へと通された。
心のこもった主の歓待の後、ダインとボズは現場へと赴き、執務室にはソリスとユーリだけが残された。



「…さて」

このタイミングを待っていた、と言わんばかりにユーリが切り出す。

「ソリス様、あなた一体ダイン殿に何ふきこんでくれちゃったんですか?」



相変わらず直球なことだ、と、ソリス・ラウルベルは困ったように笑う。

「ダイン君が何か失礼をしましたか?」

「失礼…ではないけど」

気を削がれたようにユーリは口ごもり、

「でもね、やっぱ変だって」

「変、ですか?」

「変よ、変。変ってーか…不自然」

むー、とむくれて頬を膨らます少女めいた女性に、ソリスは破顔した。

「あなたは…変わりませんね」

「それって嫌味?」

軽口のように切り返し、それからユーリは自身の失言に気づき、さりげなく話題を変えた。

「それよりも、随分な厳戒態勢だけど、何かあった?」

「あなたにはかないませんな」

ソリスは嘆息し、自らお茶のおかわりを申し付けた。

「あ、私はできればコーヒーで」

控えめにそう付け加えるのは、お茶はセーブルでは貴重品だと知っているがゆえだろう。
そうお気づかいなく、と、ソリスが微笑むと、

「いえ、私、元々コーヒー党だから。
 ラフトフリートではほとんど流通してなくて、お茶ばっかだったから」

と、相手に負担をかけない断りを入れてきた。
それなら、と、ふたり分のコーヒーを頼み、侍女が退室したのを見計らって、ソリスは話を再開した。

「実はですね、出るんですよ」

「出るって…何が?」

昔から怪談めいた話が苦手な娘に、ソリスはわざとそんな言い回しをしてみせる。
腰が低く、名実共に理想的な領主である彼がこういう戯れをして見せる相手は、本当に極々少数だ。

まあ時折ごく稀に、ダインあたりを少々からかってみる程度で。
そのダインにしても、もし今この場に同席していれば、主のあまりにもらしくないあけすけなやり取りに目をむくことだろう。



「ええ、山賊が」

「……さんぞく?」

舌足らずな口調で問い返すユーリに、ソリスは、はい、と頷く。

「山賊とはまた、時代錯誤もはなはだしい。
 でもそれって、王子軍への出兵拒否の理由にしては、ちょっと弱いんじゃない?」

「…やはり、あなたには見抜かれていましたか」

ソリスは笑みの消えた困り顔で、事の次第を説明し始めた。
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