捏造幻想水滸伝X〜初〜
□哀しみの眠る場所
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ロードレイクは復活した。
しかし、あまり状況は良いとは言えない。
ビーバー族の協力を得られなかったことに加え、セーブルも対アーメス用に守りを固める為、王子軍に兵は出せないとの申し出があったという。
「ゲオルグ殿、説得して下さればよかったのに」
「俺が大っぴらに動けば、いらん噂の種になるだけだ」
ルクレティアの軽口を、ゲオルグはさらりと受け流す。
確かにゲオルグの言う通り、対外的にはお尋ね者の彼が説得工作に勤しめば、それはそれでやっかいなことになりかねない。
「でも、セーブルが王子軍から距離を置くような形になっちゃったのはまずいですね」
ルクレティアは軽い口調のまま、ひらりと扇を取り上げた。
口元を扇で覆うのは、思案する時の癖なのだろうか。
「では、それがしがひとっ走り行って、様子を見て参りましょう」
ボズ・ウィルドが例の調子で請け負った。
「なに、ラウルベル卿は決して頑迷な人物ではありません。
卿やダイン殿と懇意であるそれがしが事情を話せば、きっとわかって下さるはず」
そういう問題か? とユーリは思い、ツッコミたくなった。
「……仕方のない状況、とも言えませんか?」
思うだけでなく、つい、ぽろっと口にしてしまった。
ボズやルクレティアだけでなく、王子やラージャ、タルゲイユにゲオルグといった、軍議の間にいた幹部連中の目が一斉にユーリに向く。
おっと、失言か、とも思ったが、名目上はセーブル出向組となっている身である。申し開きくらいはしておいてもいいだろう。
「セーブルという街は、位置的にファレナの砦となるべき宿命を背負っています。
セーブルを突破されること、イコールファレナに外敵を入れること。それをあの街の民はよく理解しています。
彼らは、自らの街を守る為だけに血道を上げているわけではないのです」
「まあ、それはわかるんだけどね」
ラージャがとりあえずでも肯定してくれたのは、彼女がかつて水軍頭領として采配を振るっていた過去かあり、
かつ、今現在、ラフトフリートを率いているがゆえだろう。
「そうですね。
ユーリさんも一度、里帰りしてみてはいかがです?」
「私の里は、セーブルではありません」
ルクレティアが扇で口元を隠して目を輝かす時は、たいてい何か企んでいる。
その手には乗るか、と、ユーリは一応抵抗してみせた。
「あらあら、手厳しいですね。
でも、そろそろダイン殿も、ユーリさんが恋しくなってきた頃なんじゃないですか?
ラウルベル卿にしても、ユーリさんの言うことなら案外素直に聞いてくれるかも知れないですし」
「…いや、それはないでしょう」
ユーリは脱力してうなだれた。
後者はともかくとして、前者は100%ありえない。
故郷に戻った彼のそばには、最愛の婚約者がいるのだから、他の女のことなど思う間もあるまい。
「うふふ…そう思います?」
ルクレティアは含み笑いで煙に巻き、解散を告げた。
こうなってしまえば、どうあっても、一度セーブルに行かねばならないようだ。