もし焼き討ち後のカラヤに現れたのがクリス(&ボルス)だったら
□お刺身はわさび醤油の一択で
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しばらくパーシヴァルの、ははははは! という高笑いと、赤い顔で何やらもごもご言い訳するサロメの声とが響いていた。
ユーリはというと、パーシヴァルが城下に来ていた商人に押し付けられたというマグロ(まるごと1匹)に夢中だ。
「パーシヴァル殿、コレぶら下げてお城の中歩いてきたの? 笑えるわー」
「客観的に見ればそうでしょうね。しかし、いいマグロでしょう? 今朝まで泳いでたそうですよ」
「肝心のオールスパイスはどうしました?」
まだ若干赤い顔のサロメがここぞとばかりに。パーシヴァルは、へにょり、と眉を下げ、
「それがなかったから、代わりにこれを押しつけられたんですよ」
今度はサロメが「おやおや」と言う番だった。
パーシヴァルは弁解のように、
「スパイスの代金でこれが買えたのだから得したと言えば得したことになるんでしょうが」
「お得もお得、大特価じゃない!」
ユーリははしゃいでテンション高く、
「うわーホントに新鮮! お目々がキレイだもの!
今朝まで泳いでたってのもウソやかたりじゃなさそうね。これならお刺身だってイケるわよ!!」
「おさしみ?」「刺身…ですか」
パーシヴァルとサロメがハモった。
「生で魚を食する文化のある国が存在すると聞いたことはありますが…」
サロメはそこで言葉を切り、気味悪そうにマグロ(丸ごと1匹)とユーリとに交互に視線を巡らせる。
パーシヴァルはというと、
「サロメ殿、そんなゲテモノを見る目で見ては失礼ですよ」
と、フォローを入れつつ、
「おさしみとやらは、何やらヒッティングマーチがガンガン鳴り響きそうなイメージがありますよね」
ユーリはパーシヴァルの言い草に爆笑した。
やれやれ今泣いたカラスがもう笑っている、と、パーシヴァルは安堵混じりに呟く。
「大丈夫、これだけ新鮮ならヒッティングマーチは鳴らないわ。心配なら、氷の息吹漬けにしとけばいいのよ」
「氷の息吹漬けって…」
紋章の使用法おかしくないですか、と、呆れたパーシヴァルにユーリは飴色の瞳を凛と輝かせ、言った。
「紋章は戦いの道具? …そんなこと誰が決めたのよ。
紋章なんて、何かを司る何者かが人が便利に快適に過ごせるようにと授けてくれた力なのではなくて? 使い方さえ間違わなければ何したっていいし、どんなふうに使ったって構わないはずだわ」
サロメははっと打たれたようにユーリを見た。随分と熱量のある眼差しだ。
「ところでおさしみとやらはどうやっていただくのですか? マヨネーズ? ドレッシング?」
パーシヴァルは不穏を察してそれとなく話題を変えた。サロメの目の色が変わっている。
ユーリはそれに気づかぬ風で、マヨネーズって…と、絶句して、
「そんなの、おしょうゆとわさびの一択でしょ」
「生の魚に、しょうゆ?」
OMG! の仕草でパーシヴァルが大袈裟にのけぞると、ユーリはオーマイガッド返しならぬ南無三返しをし、
「お刺身にマヨネーズとかなめとるんかい味オンチやろ! …じゃなくって。
そっか、ゼクセンってグラスランド寄りの食文化なのね。せっかく海沿いの立地なのになんて勿体ない。
いいわ、それならこの度はファレナが誇る生魚の文化を特別に披露してあげる。あの伝説の料理人レツオウ直伝の刺身盛り合わせ…の簡略レシピよ覚悟なさい!」
「って、何でそんな料理勝負のテンションなんですか…」
パーシヴァルは如才なくツッコミを入れたが、サロメは黙ったきりだった。だが視線の熱量は増している。焼き殺す、というよりは、じっとりとろ火で炙るかのような熱。
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