もし焼き討ち後のカラヤに現れたのがクリス(&ボルス)だったら
□『彼女』の肖像
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クリスはボルスを連れ再びアムル平原へ、ルイスはクリスの部屋を整えて、サロメとパーシヴァルは厨房で夕食の準備、レオとロランは鉄砲玉よろしく出たっきり。
自称まじない師の少女ユーリはクリスにフラれ、ルイスにも「そんな、休んでて下さいよ」といなされ、結局サロメとパーシヴァルの所へやってきた。
自ら手伝いを申し出るだけあって、ユーリの手並みはなかなかだった。たしなみとしてではなく、日常的に料理をしている人特有の手際の良さがある。
パーシヴァルがその点を指摘し褒めると、ユーリは照れるでもなくごく当たり前のように、
「一応、軍隊のまかないさん的なこともやってたりしたので」
と、言う。
ほぅ、と、サロメの片眉が上がった。何か言いかけたサロメを遮るようにユーリが、
「お部屋が多少汚れてたって生きてはいける、でもごはん食べらんなかったら死ぬでしょう」
「……」
サロメは探るような目でユーリを見た。
潔癖症の気のあるサロメのことだ、この反応は大して不自然ではない。
「だから私、あなた方のように小洒落たものはつくれないんです。
…凄く気合の入ったディナーですのね、パーティーか何か?」
作業中のサロメの手元を見ながら訊くユーリにパーシヴァルが、
「クリス様の昇任祝いですよ」
と答える。まぁ、とユーリは色めき立って、
「それはおめでたいこと。…え、団長におなりなのですか? あのお若さで? 素晴らしいわ」
「まぁ色々ありましてね」
とだけパーシヴァルは言った。『色々』の詳細を他国の娘に披露しなくてもよかろう、という判断だ。
その合間にもユーリは玉ねぎの皮をむき、手早くスライス、水にさらして、ホワイトソースをかき混ぜて…と、マルチタスク機能全開だ。
予想以上に順調な進捗状況で、サロメは既にデザートのケーキ作成に取りかかっている。フレッシュフルーツをふんだんに使ったタルトはクリスの好物だ。
ユーリは、黙々と作業を進めるサロメを見て、職人みたい、と言った。手伝うとかえって邪魔になりそうね、とも。
ミネストローネの仕込みをあらかた終えて、後は煮込むだけの段階になって、パーシヴァルが彼にしては素っ頓狂な声を上げた。
どうしたの、と尋ねたユーリに彼は、
「オールスパイスを切らしていました。ひとっ走り街まで出てきます」
言い残し、パーシヴァルは財布を持ち、『疾風の』と異名を取るのも道理と思わせる素早さで出て行った。
超こだわるなぁ、と、誰にともなく呟くユーリにサロメが淡々と、
「パーシヴァル殿は凝り性ですからね」
「そう言うあなただって」
ユーリはサロメがカットしたフルーツの群れを見やる。
美しく、等分に切り分けられた果実達は最早パティシエの手によるものだった。
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