もし焼き討ち後のカラヤに現れたのがクリス(&ボルス)だったら

□サロメママの尋問
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サロンに戻ると、早速サロメのチェックが入った。

「クリス様、そちらの方は?」

ただでさえいいとは言えないサロメの人相が指名手配中の凶悪犯のようになっている。
クリスは慌てて、

「行き倒れかけてたのを保護した。ファレナの出身だそうだ」

クリスとしては、敵方グラスランドやハルモニアの者ではないぞ、という弁明のつもりだった。
しかしサロメはさらに凶悪な顔になり、

「度々申し上げておりますがクリス様、中途半端な優しさで生き物を拾ってくるものではありませんぞ。
 飼い切れないのなら拾うなと――」

「そんな、犬猫じゃあるまいし」

クリスは少女の手前フォローしたが、実のところはたじたじだ。
サロメは舌鋒鋭く、

「犬猫であればまだマシです。誰が面倒見ると思ってらっしゃるのですか」

こらえ切れないといった風に飴色の瞳の少女が吹き出した。
失礼致しました、と、彼女は詫びて、

「ふふっ、でもおかしくて。まるで、ママとお嬢ちゃんの会話みたい」

「ママですか……」

毒気を抜かれたサロメにパーシヴァルが、

「なるほど言い得て妙ですね、サロメママ」

「悪ノリが過ぎるぞ、パーシヴァル」

クリスは笑い混じりに一応、パーシヴァルをたしなめた。
しかしこんな時、我先にとノッてくるボルスがずっと黙りこくっているのが気になっていた。
少女はサロメに向き直るとすっと笑みを消し、異国の礼を取り、凛としてのたまう。

「ご挨拶が遅れましたことお許し下さい。私はユーリと申します。以後お見知りおきを…サロメママ様」

ユーリと名乗った少女の渾身のボケは、残念ながらサロメに拾ってはもらえなかった。

「貴女は騎士なのですか?」

「死んだ夫が騎士でした」

サロメの問いに、当惑気味にユーリが答える。
パーシヴァルがこそこそと、あの若さで人妻、しかも未亡人! と、クリスに耳打ちする。
なるほど、と、サロメはひとりごち、

「失礼ですが、お名前はご本名で?」

「サロメ!」

尋問のような言い草にクリスはサロメを咎めたが、サロメは止まらなかった。

「魔法はお得意ですか? 火魔法、あるいは水魔法――」

「今宿してるのは水と吟遊詩人ですけど…あ、もちろん偽名なんて使ってませんよ? そんな必要ないですし」

ユーリは、何このオジサン、という気持ちを隠そうともせずに答える。

「ご出身は、ファレナ女王国で…もしやファレナの南方の街ではありませんか? 今、故郷をお離れになっているのはどのような事情で?」

「サロメ、いい加減にしないか!!」

クリスは怒鳴りつけた。
サロメ、お前なんだかおかしいぞ、と、言ったクリスと少女とに、失礼しました、とサロメは謝罪し、

「あまりにも共通点が多かったものですから。
『ファレナ』の古風な『騎士の礼』。そして『ユーリ』という名。…『ジェノサイド・エンジェル』と同じ名です」

「ジェノサイドって…」

ユーリは絶句し、酷い言われようね、と、吐き捨てる。
おや、と、サロメは小首を傾げて、

「では『ファム・フラム』の方がよろしかったですか?」

「いやそういう問題じゃなくて…」

ユーリはげんなりとした表情になり、取り残されてポカーン状態の若手3人に、

「サロメママ様ってひょっとして、歴史ヲタですか?」

「あぁ、その傾向はあるな」

「傾向というか、そのものというか」

「おれはサロメ殿の話の8割方は理解できんぞ」

クリス、パーシヴァル、ボルスがそれぞれに――黙りこくっていたボルスが浮上したようで、クリスは安堵した。
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