捏造幻想水滸伝X〜漆〜
□Letters
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セラス湖ほとりの王子軍居城。
ここのところ、シンダル城の主はあちこち多忙に飛び回っている。
もっとも王子殿下はいつだって出たら鉄砲玉で、城を空けている時の方が多いのだが。
エストライズが陥落し、セーブルもまた敵の手に落ちた。
それでもまだここは、平和な不安で済んでいる。
軍主の留守中、城を預かるルクレティアは、自身の裁量でセーブルからの文の封を切った。
つい先日、ロードレイクに避難したセーブル領主ソリス・ラウルベルからも一報あったところである。
ルクレティアでなくとも奇異に感じるだろう。
いかにも女文字という感じの、流麗な筆跡。
達筆というのではないが、整っていて読み易い。
ルクレティアはざっと目を通し、次いで念を入れて熟読。
ルクレティアの片眉がわずかに上がった。
「お呼びでしょうか」
ルクレティアの私室を、ダインが訪れたのはそれからすぐのこと。
「ええ、お呼びです」
ルクレティアは、セーブル警備隊長に椅子を勧め、茶を淹れた。
ダインは慣れない場所に戸惑い、居心地悪そうにしている。
「セーブルからお手紙ですよ。
正確には、ユーリさんから」
「ユーリ殿から?」
ダインは怪訝そうにしながら受け取った。
封筒の表書きを律儀に確かめるダインに、ルクレティアは再度促す。
「どうぞ。ダイン殿と連名になってますから」