捏造幻想水滸伝X〜漆〜

□おもてなしは天使の羽根で〜inエストライズ〜
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所変わってエストライズ。
ファレナの西の玄関口は、今日も快晴だった。

いつもよりも1時間早く起床したドナ・ウィルドは、てきぱきと洗濯を済ませ、慌しく子供達に朝食を食べさせ、その後、念入りに家中をぴかぴかに掃除した。
ドナは一応、この街の領主夫人…のはずだが、やっていることは普通の主婦と変わらない。

自分達一家の生活は、領民の税金で成り立っている。余計に使うわけにはいかない。
これが、ドナの信条だった。
よって彼女は、使用人の類は常駐させず、自分達でできることは自分達で、をモットーに暮らしてきた。

42年ばかり『領主様(の息子、の時代もあったが)』で通してしまった夫を躾け直すのは流石に無理だったが、
2人の息子はドナの英才教育(!?)の成果で、仮にドナがぽっくり逝ってしまっても(!)困らない程度の生活能力を身につけつつある。



約束の時間より少し前、ママ友(!)たちがウィルド邸にやって来た。
大がかりなイベント(?)の際には、ドナはまず彼女たちに声をかける。

主婦は究極のサービス業、が、ドナの持論だった。
主婦をやっている人は、大抵のことを上手くこなせる力があるものなのである。

謝礼はそれなりにお渡しするが、多分友人達はそれがなくとも喜んで骨を折ってくれるだろう。
ドナの友人は皆、基本的にお祭りが大好きだ。しかも今日は、彼女たちにも同席してもらうことになっている。
集合した年齢様々な仲間たちのテンションは、いつにも増して高かった。

「ミランダさん、じゃあ行きましょうか」

ドナは友人たちの中では比較的若く、体力のありそうな女史と共に街に出た。買い出しの為である。
その他の女性たちは、勝手知ったるウィルド家のキッチンで既に下ごしらえにかかっていた。
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