捏造幻想水滸伝X〜漆〜
□reqiem
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再び山道を抜け、馬を待たせていた場所まで戻り、全速力でセーブルへ。
明日、総攻撃。ついにその日が来る…来てしまう。ロードレイクの避難を待たずに。
あの街を戦場にするわけにはいかない。
あの街は太陽の紋章の災厄からやっと立ち直ったばかりなのだ。
となると、やはり、フェザーウィンドいや西の関所まで後退だ。
ああ、ついにセーブルを明け渡す刻が来るのか。
覚悟していたつもりだったのに、いざその時が来るとなると、やはりつらい。
セーブルは今やユーリにとっても、『故郷』と思える大切な場所になっていた。
そのことを、思い知らされた。
南の門の前まで来て、ようやくユーリは人心地ついた。
還るべき場所に還れたという、まぎれもない安堵。
ここまで随行してくれたオボロに丁重に礼を言うと、彼はいえいえ礼には及びません、と笑って、
「では私、少々野暮用がありますので」
「? そう…」
気をつけて、とユーリが言うと、オボロは一礼し、足音もなく引き返して行った。
元暗殺者の探偵さんの去り際は、見事と言うより他なかった。
彼の言う『野暮用』に興味をそそられなくもなかったが、王子殿下のお仕事だろうな、と想像はついた。
調査迅速・秘密厳守・真実一路の探偵さんは忙しいのだ。