捏造幻想水滸伝X〜漆〜
□tiger in my Love 〜中編〜
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ようやく山道を抜け、平原に出た。
この先はしばらくなだらかな草原が続き、その先にアーメスの本陣がある…はずだ。
ユーリが法外な人とポッチをかけて得た情報はガセではなかったことが立証された。
アーメスの本陣は、確かに把握していた通りの場所にあった。
ユーリはオボロを残し、単身踏み込んだ。
見張りらしき兵もおらず、誰何もされない。
入口で怪しまれ事情聴取がデフォだと決め込んでいたユーリは、丸刈り軍団相手に質疑応答のシミュレーションまでこなしてきたのだが。
「…こんなにあっさりしちゃってていいの?」
ユーリはつい、かすれ声で呟いた。
こうもあっけなく入り込めてしまうと、逆に何かの罠かと不安になる。
ユーリは怯えと警戒をあえて前面に押し出しながら、きょろきょろと辺りを探る。
ティニーは臆病で、物怖じする子だったという。
周囲を観察するにしても、スパイのように何食わぬ態度で…ではないはずだ。
アーメス兵達は一様に生気がなく、ぐったりしていた。
食べるものを食べなければ力も出ない。加えて、続く悪天候に長引く戦闘。
立ち番らしき下っ端の兵らは酷く消耗しており、矛に体重を預けて立っているのがやっと、という者さえいた。
――そう、ここまで追い込まれてたの。
前線の先発隊に比べればまだ余裕がある――偵察兵からはそう報告を受けていた。
しかしそれは、戦闘にかまけて『諜報』に人と時間を割けなくなる前の段階の、古い情報だった。
自身で確かめるアーメス本隊は、前線の兵士と変わらないくらいに飢えて、疲弊している。
――こんなんなら、乗り込んでってガチでも勝てるんじゃないの?
もちろん、そんな無謀なことはしないが。
ともかくも、セーブル警備隊の採った『策』は、確実に南岳兵団を追い込んでいたようである。
必ずしも即効性のある策ばかりではなかったので実感できていなかったが、
速さよりも確実性を狙った手管は、敵に着実にダメージを与えていたことは確認できた。