捏造幻想水滸伝X〜漆〜

□tiger in my Love 〜前編〜
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『遺書』と『ただの業務報告』は既に、セーブルを出発していた。
今日中にはロードレイクに着くだろう。

ユーリは久々に鏡など取り出し、自身の姿を確認した。我ながらこの状況で、随分頑張ったと思う。
あとはやるだけ。そう、やるだけ、なのだが――。





馬小屋に向かう道すがら、意外な人物に出くわした。

「あら、オボロ先生」

ユーリは驚き、目を見張る。
王子軍が誇る探偵事務所の所長さんは、声をかけてきた人物が誰なのか、まったく把握していない様子だった。
それも仕方のないことか。何せこのがらがらの風邪声ときて、それに――。

「こんな国境くんだりまでお疲れ様です。何かご用ですか?」

ユーリは装着していたメタリックブルーのパピヨングラスを外し、微笑みかける。
ようやっとオボロは正体を悟って、相好を崩した。

「何かご用も何もユーリさん、あなたの所在調査ですよ。
 王子殿下はあなたのことをとても心配していますからね」

「だったらさっさと撤退命令でも出して欲しいわ。
 王子軍が何もたもたやってんのかわかんないけど、こっちはお尻に火が点いてるの」

ユーリはぷるんっ、と頭を振った。
久しぶりに結ったツインテールが動きに合わせてふぁさっと揺れる。

「…それにしてもユーリさん、随分と珍妙な、いえ可愛らしい格好ですねえ。
 仮装大会にでもお出かけですか?」



オボロがそうのたまうのも無理はない。
ユーリは今、白いカシミヤのケープを羽織って可愛らしいファー付の高級ブーツを履き、素顔のわからなくなるメタリックブルーのパピヨングラスを装着している。
とどめは赤いリボンのツインテール・しかもブリーチ済。

自身が殺した少女将のコスプレか、と失笑しないで欲しい。
一応ちゃんと、目的があってやっているのだからして。
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