捏造幻想水滸伝X〜陸〜
□ラビリンス 〜前編〜
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アゼルは再び要道に出、来た道を戻った。
やることはいくらでもある。
急患のオペのコトを後続に伝えて、進行の段取りを変えなくてはならないし、第3キャンプから要請のあった戦闘員の手配も済ませなくてはならない。
妊婦さんの状況だって把握しておかなきゃいけないし(※この時点で、ロードレイク側にはヒルダのことは伝わっていない)。
「もう一体何から手をつければいいワケ!?」
と、発狂して逃げ去りたい。でもそんなワケにもいかない。
アゼルはこんぺいとうをひとかけ、かじった。昼食など見事に食いっぱぐれている。
第1キャンプ周辺で、輸送隊の本隊と出くわした。
彼らは、あるはずのトロッコが無いコトに驚き、困惑している。
――どうせならトロッコも持って来とけばよかった。
アゼルは自分の手並の悪さを恥じ、トロッコが出払っている事情について、輸送隊の責任者に説明した。
口髭のおじさんは、トロッコの無断使用については責めず、ただ、手術の成功を祈るとだけ言った。
「トロッコ、持って来ます」
アゼルは踵を返したが、いやいいよ、とおじさんが止めた。
「オイフェが取りに行ってくれるそうだから、君は本来の任務を続けなさい」
アゼルはそこではじめて、ヒルダの陣痛とそれに伴う諸々を知った。
「ええーっっ! もう生まれちゃったんですか!?」
「いや、生まれたという話はまだ聞かないな。
しかしどっちみち、ロードレイクまで保たなかったということさ…」