捏造幻想水滸伝X〜陸〜

□昔取った杵柄
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セーブル街内に残ったソリス・ラウルベルの元には、様々な情報が刻々と入って来ていた。
彼が少年だった頃、とあるいくさに巻き込まれた際、師とも仰ぐ女性は『情報』を非常に大事にしていた。
彼女は多忙な夫に代わり、玉石混合の雑多な情報の中から精度の高いものだけを拾い集めては、戦略に活かしていたものだ。

ソリスは彼女のやり方を真似て、がらんどうのような街の中で様々な情報を元に、各々の事象に対して指示を飛ばしていた。



「第3グループで脱落者? …ああ、フリージ卿夫人ですかね。
 メリッサさんが残ってくれたなら、そちらはどうにかなるでしょう。
 救護の手配は済んでいる? それはまた手回しがいい」

「第6グループは戦闘続きですね。
 直近のグループの進捗状況も見て、少し足を休めてもらいましょう」

「馬車最終便が第2キャンプで足止めですか。
 予備の馬車があったはずです、そちらで出発させて下さい」

「1便で急患? 
 いえ、予定の組み換えは構いませんよ。しかし、穏やかではありませんねえ…」



出発前のシミュレーションはやはり、机上の空論とまで言ってしまうと言い過ぎだが、あくまでシミュレーションに過ぎなかった。
いざ本番ともなると、問題山積。想定外の事態がボロボロ出てくる。
救いは、想定外を想定して、予定に少々の『遊び』を組み入れていたことか。


…しかし、それにしても。



「ユーリ様…」

誰も聞いていないのをいいことに、ソリスはつい、ひとりごちた。

「やはり私が街に残っていて良かったでしょう?」
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