捏造幻想水滸伝X〜陸〜
□emergency
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「ジュリア、急いで!」
ユーリは来た道を戻った。
ジュリアは本当にきかん気の馬で、乗る時にこそ悪戦苦闘するが、一度乗られてしまうと観念するのか、一応言うことをきいてくれる。
ユーリはこの白馬に鞭は用いない。
気性は荒いが利口なジュリアは、名を呼ぶだけで走ってくれる。
「ジュリア、もっと!」
そして今、いつになく連呼するユーリに、何がしかを察したのだろう。
馬だが馬鹿ではないジュリアは、白い旋風のように駆けた。
一番近いキャンプに駆け込み、急患の旨を告げた。
急ピッチで準備させ、場所を教えて向かわせる。
ユーリが救護班と共に行かなかった理由は、ただひとつ。
――第3キャンプには戦える人員がいない。
このキャンプは既に補給路接続の可能性を捨てており、よって、前線仕様の戦闘員が少ない。
人手を割いてここの守りが薄くなっては、元も子もないのだ。
――と、なると。
一番有効で手っ取り早いのは、人余りのパーティーからさらって来ること。
確か、ちょうどおあつらえ向きの方々がいたはずである。