捏造幻想水滸伝X〜陸〜
□all for one
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「ちくしょう、降り出しやがったぜ」
出立早々の災難に、エルトは天を睨んで悪態をついた。本日の目的地・第5キャンプまではまだまだ遠い。
そんな中でも子供達は、土方よろしく要道建設に励んでいる隊員達にサインをもらっていたりする。
「ったく、気楽なモンだよガキめらはよ」
つい早足になるエルトを、トムスが諌めた。
「ここで走ったところで数秒と変わらん。かえって体力を消耗するだけだぞ」
「わーってるよ。ついだよ、つい」
ブラザー・フェリペは、子供らに雨避けの合羽を着せるのに躍起になっている。
当然、子供だけに奴らは大人しく着せられたりはしない。
あっちで誰々さん見たよー、とか、あ、誰それ様サインー! とか、無駄に元気に走り回っている。
「このまま行くのか?」
暗に、どこかで雨止みを待とう、という意を含んで、フェリペがエルトに訊いた。
エルトは内心、ガキめらに風邪でも引かれちゃアレだし、ちっと休憩すっか、等と思っていたが、
「いや、このまま進もう」
答えたのは、トムスだった。
「この雨でか? お足元の悪い中どころの騒ぎじゃなかろうが」
反論したのもまた、尋ねたブラザーでなく、レプトール老だった。
「通り雨なら待つのもよかろう。しかし、雨止みを待っていては夜になる。
少しでも距離を稼いでおくべきだ」
トムスは断言した。
このトムスに限らず、元アーメス兵達は一様に、紋切型にさくっと話す。
無駄に言葉を飾ったり、もったいぶって婉曲な物言いをしたりしない。
直情型のエルトは、そのあたりも気に入っていた。
元より彼は、『余所者』を差別するような性質ではない。