捏造幻想水滸伝X〜陸〜
□depert
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そして『その日』がやって来た。
低い雲がどんよりと立ち込め、薄暗く今にも泣き出しそうな空。
人によっては、余程の用がない限り外出などしまい、と決心しかねない、寒い朝。
…はっきり言って幸先はあまり良くなさそうだ、と、セーブル市民の何割かは思った。
第一陣、第二陣は既に時間差で出発していた。
いずれも屈強な男達のグループ。
彼らは一般市民の避難の先触れとして、露払いとキャンプの制定に各々力を尽くしている。
警備隊員の何割かとロードレイクの有志は、西の関所から街に向かって下るようにして、避難路の建設を続けていた。
第3グループの者達は、セーブルから関所までのルートを、しばらくは防御壁もない野っ原を歩くことを強いられる。
「本当に大丈夫なの、ヒルダさん?」
ユーリは第3グループ――主に貴族の人間で構成されている――の出発前、友人に念を押した。
ヒルダは臨月だ。歩くにも難儀しそうな程、大きなお腹をしている。
いつ産気づいてもおかしくない彼女に、ユーリは再三、病人用の馬車に乗るよう説得していたのだが。
「病気ってワケじゃないし、どうにかなるさ。他に馬車に乗りたいヤツはいくらだっている。
あたしが乗ったら、他の誰かひとりを追い出すコトになるんだよ」
ヒルダは頑として聞き入れない。
「いざとなったら馬車を止めてでも押し込みますわ」
義妹のリンダがユーリに耳打ちした。
彼女は予備警備隊員として、事が起きれば――すなわち、モンスターの襲撃でもあれば、率先して戦ってもらう立場である。