捏造幻想水滸伝X〜伍〜
□demento 〜後編〜
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ドアが開いた。ノックもなく唐突に。
ドアを開けたダインは、一瞬ぎょっとしたように立ち竦み、ソファーの上で睦み合う少年少女を見つめていたが、
それはおいたがバレた少年少女の方も同様だった。
いち早くダインが立ち直り、すぐにいつもの冷静な武将の顔になり、
落ち着き払ってドアを閉め、するりとすべり込むように部屋に入ってきた。
はだけられたワンピース姿のユーリは、
乱れた姿を正そうとする余裕もない程、石化して見事に固まってしまっている。
蛇に睨まれた蛙、いや、黒豹に怯える小うさぎそのもの。
シェラヴィにしても、内心では動揺していた。
しかし、ユーリは決してダインのものというわけではない。
そもそもダインが、ユーリを独り占めしていること自体がおかしい。
彼に自分達を責める権利などないはずだ。
ダインは自身の主兼部下と王子に、射殺さんばかりの目を向けている。
シェラヴィは、受けて立った。
静かに怒りの炎を燃やすターコイズブルーを、真っすぐに、きっちりと、見返した。
「これは…どういう趣向ですか?」
ダインの声は妙に平坦に響いた。
これは相当怒ってるな、とシェラヴィは分析。ダインは怒ると、表情の一切が消えるのだ。
「見たまんまの通りだけど?」
シェラヴィは肩を竦めてやりすごそうとする。もちろん目は逸らさない。
ターコイズとサファイアが、静かに空中で火花を散らした。
「見たままを私なりに解釈させていただくと」
ダインはまるで、兵法について述べるかのような堅苦しい口調で言った。
「私が告発すれば、王子殿下には牢にお入りいただき、その後、軍を追放させていただくことになるでしょう」
「正確には未遂だけど、まぁ、否定はしないよ」
「軍主がその有様では、下の者に示しがつきませんね」
ターコイズブルーに鋭さが増した。
獲物を狙う肉食獣の雰囲気に、流石にシェラヴィも怯む。これはもう、理屈ではない。本能だ。