捏造幻想水滸伝X〜肆〜
□君の青・幕間
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シェラヴィが覚悟を決め、重い腰を上げたのは、午後のお茶の時刻も過ぎた頃だった。
シェラヴィとダインは、連れ立ってラウルベル邸の執務室に行き、ソリスの心のこもった歓待を受けた。
王子と領主が型通りのやり取りをした後、ダインが懐から封書を取り出し、ソリスに差し出した。
「ユーリ殿から預かってまいりました」
そうか、と受け取り、ソリスはその場で開封し、ざっと斜め読み。
そして小さく息をつき、顎に手をやり、熟読態勢。
「…ソリスさん」
シェラヴィは、意を決して切り出した。
「今回、どうして、身柄の引渡、要求しなかったの?」
黙考していたソリスがふっと顔を上げ、夢から醒めたような表情になった。
「した方がよろしかったですか?」
「したかったんでしょ?
ソリスさんが領主の権限として『それ』をすれば、ユーリさんはセーブルに戻って来たんだよ?」
切り込むように言うシェラヴィに、ソリスは例の気弱げにも見える笑みでもって、
「おやおや、その手がありましたねぇ」
などと、ぬけぬけと言い放った。
あまりの手応えのなさに、もういいよ、と、シェラヴィが毒づくと、ソリスは笑みを消し、真顔になった。