妄想幻想水滸伝X

□東京都青少年健全育成条例改正案に反対して
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「私、ベルクート殿と付き合うことにしたから」

事のはじまりは、ユーリのこんな唐突なひとことだった。



ダインにとってユーリは、部下であり、主でもあった。
彼が絶対の忠誠を誓うセーブル領主、ソリス・ラウルベル卿たっての願いを受け入れて、
ダインはユーリに対し、ソリスに向けるのと同種の忠誠を捧げていた。

彼女が唐突で突飛なのは、何も今に始まったことではない。
男としては少々、胸が痛くなるようなことではあったが、従者としては異を唱える類のことではない。
快く、とはいかないまでも、ダインは主の「交際宣言」を受け入れた。



しかし、ユーリとベルクートの交際は、当然前途多難な予感がした。
彼女には、王子をはじめとした信望者が多数おり、ベルクートにもまた、マリノやハヅキといった難敵がひっついている。
だが。

「その辺は個人の自由ってヤツでしょ?
 …まぁ、ユーリさん泣かすようなら、ベルクートさんだって容赦しないけど」

王子はあっさり言い放ち、

「悔しいけど、ユーリちゃんならしょうがないか…」

一番の懸念材料だったマリノも、潔く折れた。何なんだこのご都合主義は。
とは言え、ベルクートとユーリは、少年少女のような初々しい交際を満喫していた。

大っぴらにベタベタすることはしないし、できない。
ユーリはマリノに配慮して、人前ではことさらベルクートを遠ざけ、
ベルクートもまた、相棒であるダインに気を使って。

人目を忍んでキスをするのが精一杯。けれど、ふたりともそれで充分満たされていた。
ふたりきりの時、抱き合うこともせずに、手を繋ぐだけ。
それだけで心が弾む。ただただ相手を愛しいと想う。



そんな、清い交際を続けていた。
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