捏造幻想水滸伝X〜弐〜
□すべてを、奪還する
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「さーてと、僕らはそろそろ行かないと」
『お菓子箱』を定位置のカウンターに戻し、
シェラヴィが軽い口調で、ソリスさんも一緒に行こう、と誘った。
王子達はここではなく、ラウルベル邸に部屋をもらっているのだ。
ぶり大根に未練はあったが、奥様とお嬢様の好意を無にするのは悪い。
彼らは、身分云々を感じさせないおやすみの挨拶を交わした。
「アゼル、明日からは覚悟しなよ?
ガレオン直伝の棒術の基礎を叩き込んであげるから」
「はい、王子様! よろしくお願いします!」
まるで仲のよい兄弟のようなシェラヴィとアゼルのやりとりに、
味噌を溶いていたユーリの手がぴたりと止まる。
「…シェラヴィ様、ガレオンって…」
彼女は辛うじて火を止め、厨房から小走りにやってくると、驚愕の表情のまま、囁くように問う。
「ガレオンは僕の師匠みたいなヒトだよ」
様子のおかしいユーリを気づかいつつ、シェラヴィは答える。
「もしかして、ロードレイクの…?」
「そう。女王騎士の最古参で、棒術のプロ。信頼できるカッコイイ騎士様。
僕が三節棍をここまで扱えるようになったのはひとえにガレオンのおかげ…って、
ユーリさんどうしたの僕何か変なコト言った!?」
シェラヴィは慌てて、かがみ込むようにしてユーリの顔を覗き込む。
うつむいた彼女は、飴色の瞳を見開いたまま、ぽろぽろと涙を零していた。