捏造幻想水滸伝X〜弐〜
□14歳からのハローワーク
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何ちゃって魔法剣、おれでもできるかなー、等と口々に言いつつ鍛錬所に戻る兵達に、
いやそれムリだから、と内心でツッコミながら、シェラヴィはアゼルを呼び止めた。
「今日、食事当番とかじゃないよね?」
「? …はい」
「じゃあちょっと、僕に付き合ってよ」
アゼルは助けを求めるように隊長を見上げたが、ダインが眼差しだけで許可したので、
アゼルは素直にシェラヴィに従って鍛錬所内へやって来た。
差し出がましいかも知れないが、ユーリも同じ見立てをしているのなら。
――放っとく方が罪じゃないか。
ユーリは大方、彼女曰くの不案内な分野に遠慮して口を出さないだけだろうが、
そんな思惑でこんな年若い少年が犠牲になることはあってはならない。
――ここはもう、王子の強権発動してでも正してみせるからね。
「じゃあ、これ、ちょっと持ってみてよ」
シェラヴィは、先程の模擬戦で自身が使っていた棒術用の木刀をアゼルに押し付けた。
「え、何で…?」
「いいから」
他の兵達は、一連のイレギュラーイベントで中断していた訓練を再開し、
こちらに気を向ける者はいなかった。
だが、ダインとベルクートだけは何をする気かと注視している。
「…棒なんて、あったんだ」
アゼルは呆然と呟いて、次いでゆっくりと、柔らかい笑顔を浮かべた。