昼下がりのティータイム
□I doll
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「で、どういったご用件でしょう」
にっこり笑って、けれど目には険を含んで、ユーリは問うた。
「立ち話も何ですから、お茶でも」
サロメは台本でも読むような調子で返す。
「ナンパにしてもセンスない」
ユーリは失笑と共に切って捨てた。
ナンパですか…と、呆然とするサロメは、ある意味で可愛かった。
このひとは自分の今の行動が、一般的な俗人から見るとこう解釈されるのだという自覚がなかったのか。
「あいにく今、城主様のお手伝いが残っておりますの。またの機会に」
「城主殿ならレストランでお見かけしました。
シーザー殿につかまっておりましたから、しばらくの間は大丈夫でしょう」
サロメはユーリの逃げ道を完全に塞いだ。
サロメはおそらく、ユーリの出方をシミュレートして、事前にトーマスが休憩に入るタイミングを調べて、その上で接触してきたのだろう。
ユーリはもの憂げなため息をつき、
「ではきっぱりと、お断りいたします」
本当にはっきりと言ってやった。
軍師とお茶、では、過去に散々、痛い目を見てきている。
多分この男も私を専属の便利な飛び道具扱いする気だわ、と、ユーリはとうに決め込んでいた。
敵ながら(って、敵?)目のつけどころは天晴れだと思う。自分事でなければ誉めてやってもいい。
でももう、誰かに便利に使われるのはこりごりだ。もう関わらない、そう決めた。
こういうことは最初が肝心。
甘い顔をして見せては駄目。いいようにつけ込まれるだけ。
鼻息荒く、全身全霊で「お断り!」オーラを発するユーリに対し、サロメは特に気分を害したようには見えなかった。
怒りもしないし怯えもしない。
穏やかな、凪いだ海のような表情でサロメはしばらくユーリを見下ろしていたが、やがて言った。
「それは私個人に対する『お断り』でしょうか、それとも私の属性に対しての?」
「……」
どうやらサロメは、ユーリのアレルギー反応がどこからきているのかも正確に把握しているようだった。
ユーリは負け惜しみのように言った。
「あなた、根っからの軍師ね」
「ありがとうございます」
「誉めてないってば」