捏造幻想水滸伝X〜漆〜
□遺書
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「規則では、遺書を書くことになってるけど」
例によって朝の定例会議(もちろん野ざらし)。
ユーリは居並ぶ幹部連中を前に、何気ない調子で告げていた。
じりじりしながら待っている王子軍からの連絡はなく、いたずらに時間ばかりが過ぎて行く。
戦闘で傷つく者、寒さや劣悪な環境で体調を崩す者は後を絶たない。
もちろん、ギリギリまで粘った上での総員退避となる予定だが、もう充分ギリギリまで頑張ったと思う。
「えー、遺書〜?」
縁起でもないなー、と、アストリアが鼻クソを飛ばすフリをする。
「そういう条項があるのは知ってましたけど。実際書くのははじめてだなあ」
幹部の中では若手の部類に入るライアンは、妙に感慨深げに呟いた。
「俺は8年前に書いた」
キュアンは何故か得意げにふんぞり返っている。
8年前…アーメス大侵攻の時か。
「あの時は単なる兵士のひとりごとだったが、今なら最愛の妻に宛てて書ける」
キュアンの自慢のポイントはそこか。ユーリは力なく笑った。
「遺書を書く、ということは、」
ブルームが囁くように、
「街を離れる日も近い、という解釈でよろしいのですか?」
ええ、とユーリは頷いた。
むしろブルーム以外の誰もその辺をツッコんでこないのが不自然なくらいだ。