捏造幻想水滸伝X〜陸〜
□genesis 〜前編〜
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夕焼けのオレンジは既に消え、辺りは薄闇に包まれつつあった。
「しっかしアイツら、来ねぇな」
エルトの言う「アイツら」とは、自身の所属する第5グループの人員のことである。
「なーにチンタラ歩ってんだか。
アイツらが来てくれねぇと、オレら解放されねぇんだぜ?」
エルトは焚き火に、そこらの枯れ枝を投げ込んで、ため息をついた。
エルトはこの状況にすっかり倦んでいた。元々、変化がないのは耐えられない性質である。
「もしや、道中で何かあったか…」
フェリペが顔を曇らせる。
あのグループは子供が多い。エルトとフェリペが抜けている今、警護員さえ子供といういっぱいいっぱいの集団なのだ。
「ご心配召さるな」
心配性のブラザーを、ミシェランがとりなした。
「私の元部下のトムスは、なかなかにして使える男でございます。
我が部隊でも防人として一流と一目置かれていたのですから。
あれがついていて、何がしかの間違いが起きる事は無きと、我が首を賭けて誓いましょう」
「…ってーかミシェラン、アンタフツーに自分の首乱用しすぎだろって」
エルトはツッコみ、
「エルトらはまだええやん。第5グループが来よったら、ほなサイナラ♪ なんやから。
俺とミシェランなんか…終わるまでずっとやで?」
スコピオは嘆く。
この場に女性でもいれば、不謹慎だとたしなめられそうだが、リンダは領主夫人に呼ばれて窪地に下っている。
ただ退屈だ、というだけなら、まだいい。
しかし、ここにいれば嫌でも妊婦の苦しいうめき声を聞き続けていなければならないのだ。
免疫のない男達にとって、この状況は地獄以外の何者でもない。
「…何かオレ、一生エッチできなくなりそう」
エルトがまた、枯れ枝を焚き火に投げた。
枝がはぜ、ぱちん、と鳴る。
「同感や。トラウマもんやで、コレは…」
スコピオが、もう堪忍してや、と首を振る。
「そう言ってやるな、本人が一番苦しいのだから」
フェリペのフォローは逆に妙に空々しく響いた。
子供らを案ずる彼に対しては慰めのコメントを発したミシェランでさえ、何も言わない。