妄想幻想水滸伝X
□リンドブルム傭兵旅団
4ページ/7ページ
「おいおい、そこ、何してんだ! ミューラーばっかずりぃぞ!」
「はいはい」
駄々っ子のようなヴィルヘルムに苦笑して、
ユーリはヴィルヘルムとミューラーの間にちょこんと座って、ヴィルヘルムのグラスにビールを注いでやった。
「お、サンキュな」
ヴィルヘルムのいかつい手が、ユーリの胸元をまさぐる。
「おいたはいけませんよ」
ユーリは、ヴィルヘルムの不埒な手に指を絡めて、握りこんでやった。
当然振り払われるか叩かれるかと決め付けていたヴィルヘルムは、拍子抜けしてかえって困惑してしまった。
ユーリは、熟考体勢に入ってしまったミューラーに穏やかに告げる。
「命を預ける雇い主のことですもの、慎重になるのは当然ですね。
いっぱい迷って、いっぱい考えて、決めてくれればいいと思いますよ」
勝手に注文した刺身の盛り合わせを受け取り、
ヴィルヘルムと胸元の攻防戦に興じていると、ミューラーが不意に口を開いた。
「悪かねぇとは思うぜ。王子のウデなのか、軍師が凄いのかは知らねぇがな」
そのふたつは切り離して考えるのは無理だろう、とユーリは思ったが、
「その凄い軍師を抱え込んでるのは、王子殿下の懐の深さ、ってことではないですか?」
と言うにとどめておいた。