妄想幻想水滸伝X
□リンドブルム傭兵旅団
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「お、美味そうなねーちゃん! また会ったな!」
ヘイトリッド城塞攻略戦を征し、シンダル遺跡を城と定めて、
とりあえず交易と仲間集めを兼ねて訪れたラフトフリートの宿屋にて。
覚えのある呼びかけに、ユーリは足を止めた。
「何だぁ、ひとりかい? いいからこっち来いよ」
粗野を絵に描いたような蓬髪の男と、長身痩躯で口の悪い男のふたり連れ。
確か、レインウォールで敵前逃亡した、リンドブルムの傭兵では?
もっとも、ユーリに言わせると、『敵前逃亡』に何ら含むところはない。
条件が変われば引き上げる。それが傭兵というものだ、と割り切っている。
ここで会ったのも何かの縁か。
ユーリはにっこり笑って、酒盛り中の傭兵達に近寄って行った。
「ま、飲めや。ホレホレ」
赤い髪の男――確かヴィルヘルムとかいったか――が勧めるビールを断り、
長身のミューラーの前にある酒の瓶を手に取った。
残量もさほどでなかったので、ユーリは瓶から直接あおってみせた。
「おいおい、大丈夫かよ」
ミューラーは呆れ顔だが、
「おおー、いい飲みっぷりだな、ねーちゃん!」
ヴィルヘルムは手放しに大喜び。
まあこれが、流れ者の傭兵との付き合い方とでもいうものだ。