捏造幻想水滸伝X〜弐〜

□漂流の羽根
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そこに、力強いノックの音がした。

気配を感じないところでいきなりノックだったのでシェラヴィは驚いたが、
ソリスに許可されて入室してきた人物を目にして、ああこれじゃしょうがないな、と納得した。
ダインは根っからの武将。気配を断つのも朝飯前らしい。

「紋章兵の武術指南の結果をお持ちしました。それから、本日分の業務報告です」

「ああ、ダイン君。ご苦労だったね。…君も一杯どうだい?」

茶器を示してダインを見上げるソリスに、それってどこの居酒屋のオヤジだよ…と、
シェラヴィは王族らしくない感想を抱く。
これも、サイアリーズやカイル達の教育のたまものだ。

「いえ、私は」

立ったままで断りを入れるダインを見て、
仕事の邪魔しちゃ悪いよな、と思い、切り上げることにした。

「じゃソリスさん、ごちそうさま。ダインさんも、お疲れ様」

王子として、領主と隊長をねぎらいながらも、変な笑いがこみ上げてくるのはもう仕方のないことだろう。
それだけ昼間のインパクトは強かった。


じゃあおやすみ、と、言いかけて、ふと、シェラヴィの天性のいたずら心が頭をもたげた。
何だか、最初から最後までソリスに「してやられた感」が漂っている。
ここで少しばかり、爆弾を落としていってもいいだろう。

「ソリスさん、さっきの話だけど。
 僕は、王子の強権発動してでももらってく気でいるから、悪く思わないでね」

ドアを閉める間に盗み見たソリスの顔が、ぎょっとしたように歪んだのを見て、
シェラヴィはようやく溜飲を下げた。
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