捏造幻想水滸伝X〜弐〜
□漂流の羽根
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「王子殿下はお訊きにならないのですね、ユーリ殿の過去を」
「訊いたら教えてくれるの?」
「いいえ」
「だったら訊くだけ無駄じゃん」
シェラヴィは形だけむくれて見せた。
「そういうことは、本人に直接訊くことにしてる。
外堀から埋めて無理矢理、とかは、趣味じゃないんだ」
「頼もしいことです。しかし、相手は手強いですよ。
彼女が自ら語った相手は、私が知る限りではダイン君だけです。
それも、信頼の証としてでなく、遠ざける為に。
…しかしそれでダイン君はかえって気持ちを固めてしまったようですから、
彼女にとっては大きな誤算でしょう」
「それって平たく言うと、ダインさんはユーリさんのこと好き、ってこと…かな?」
「さあ、どうでしょう」
それを知ってどうします? と、ばかりにとぼけるソリスに、
ああやっぱこのヒトやりづらいわ、と、シェラヴィは内心で毒づく。
「それこそ、本人にでもお訊きになられてはいかがです?
彼はもちろん、ありもしない主命を盾に否定するでしょうが…。
あの通りの大根役者ですからね」
「ああ…アレは、笑ったね」
少年と紳士は、昼間の猿芝居の一部始終を思い返し、顔を見合わせて笑い合った。