捏造幻想水滸伝X〜弐〜
□漂流の羽根
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「ユーリさんも、多分僕と一緒だと思うんだ。
兵舎の中で、みんなのお母さんか可愛い妹みたいに慕われて、
すごく幸せそうに見えるけど、一歩その箱庭から出れば、色々酷いこと言われて。
この間の夕食会でユーリさんが言ってたコト、大袈裟な誇張なんかじゃ決してないよ。
僕はここに来てまだ日は浅いけど、
領主様の愛人とか隠し子とかって噂されてるのは何度も聞いたし、
冗談抜きでアーメスのスパイ説まで出てた。
…ユーリさんの容貌が、セーブルらしくないから、ってだけのことだと思うけどね。
もっと酷いのだと、あの売女はカラダ使ってダイン隊長を誑かして、
お嬢様から奪い取る気だ、なんてのもあった。
ユーリさんがダインさんから距離取りたがるのって、その辺のこともあるんじゃないかな」
「……」
「僕は、仮にも王子だから。必要な時以外は箱庭に逃げ込んでても許された。
でも、あのヒトはそうじゃない。
だから、僕は連れてってあげたい。
ユーリさんが心からちゃんと、羽根を伸ばせる場所へ。
そりゃ、最前線の軍隊だから、完全に安全ってワケじゃない。
でも、それ言ったら、ここだって同じでしょ?」
「…………」
「ゴメン、言い過ぎた」
いいえ、と、ソリスは笑って、
「王子殿下、あなたの精神力に感服しておりました」
本心から、相手の少年を讃えた。